桑原聡建築研究所

Satoshi Kuwahara Architectural Studio

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2012年7月のアーカイブ

Column

2012年7月 [ 4 entry ]

ギャラリー巡り

ギャラリー・間で開催中の「スタジオ・ムンバイ展 PRAXIS」、21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「テマヒマ展 <東北の食と住>」、エスパス ルイ・ヴィトン東京で開催中の「AWAKENING」展の3っをハシゴした。

まずは「スタジオ・ムンバイ」。彼らは何でも一から作るとは聞いていたけれども、模型材料まで建築現場と同じかもっと手の込んだ手法で手作り!とは本当に恐れ入りました。土をこねて型に入れて圧縮して固めて着彩して石積みの壁を再現して、、、と。会場で流れていたビデオには、街角でサトウキビを人力回転絞り器(しかも移動式)にかけて砂糖汁を作り出している人や改造自転車のペダルを漕いで研磨機を回し、包丁を研ぐ研屋さんなど、あらゆる作業をアナログで、おおらかに行われている姿が映し出されていた。

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「テマヒマ展」。こちらは我が国の美しく清らかでストイックな物作りだ。手作りであることは同じだがインドの物作りとはだいぶ様相が違う。深澤直人さんが「手間ひまかけるものづくりは常に準備である」と語りかけている通り、段取りが丁寧なのだ。だから作業はものすごく整然と進む。

ルイ・ヴィトンの「AWAKENING」展はフィンランドの作家を紹介。どこか宗教儀式のようなパフォーマンスを映し出した映像作品やクリスタルを使ったインスタレーション。おどろおどろしくシュールなんだけれども背景にあるフィンランドの森の自然風景を頭に思い浮かべながらこれらを見ていくと何かに包まれるような空気感も同時に感じ始める。人と人よりも人と自然の付き合いの方が深いお国柄?なのかな。そんなところに日本人は共感するのではないか。

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帰りがけに原宿に新しく出来た商業ビルに寄り道したが今日はずいぶんたくさんのものを吸収した後だったせいもあり、感想は辛口。

スタジオ・ムンバイ

20120712.jpgインド、ムンバイ郊外に拠点をおくスタジオ・ムンバイの主催者ビジョイ・ジェイン氏の講演会を聴きに行った。

彼らは、敷地の造成から設計、施工といった建築における一連の工程すべてを、建築家と熟練工からなるスタジオのメンバーにより、手作業で行なうことを特徴とする。
だから彼らのワークショップでは、インド各地出身の職人たち(大工、石工、鉄工、金工、井戸掘り工など)約120名が住み込みで働き、ジェイン氏の指導の下、地勢や気候を読み、井戸を掘って水源を確保し、地元由来の素材とそれに適した工法を用いて建築をつくっている。
そこには乾期の猛暑と雨期のモンスーンという厳しい気候条件、材料が乏しく運搬に難のある地域条件など、我々の想像のつかないような過酷な条件、制約がある。
その一方でゆったりした時間と人力作業の確かさがある。そしてまた雨が漏ればバケツをおき並べ、猛暑の時間は木陰で過ごすおおらかな施主の生活リズムもあるようだ。

また、ジェイン氏は職人たちにスケッチブックを与え、ドローイングの描き方を教えている。
教育を受けられず文字も書けない職工たちが、日々の作業と並行して建築の設計を学ぶことになる。
そして、職人達とのコミュニケーションではジェイン氏自身が答えを出すのではなく職人達との「寸法のない」スケッチを通した「会話」により決定して行くという。
こうした「オープンエンド」な進め方により、プロジェクトにある巾の「遊び」を許容するのだ。

屋外のワークスペースとインドアのワークスペースが鬱蒼とした木立の中に絡み合いながら散在する彼らのスタジオはそれだけで僕の目には新鮮で魅力的だ。

山形へ 工場視察その2

昨年竣工したBrillia辰巳マンション
その共用部に設置した総延長約30メートル×奥行き1.5メートルという巨大な総革張りのデイベッド。
この製作を引き受けて頂いたのがAD COREさんなのだ。
車の売上が一気に冷え込んだリーマンショック後の2009年あたりだったか、AD COREが取引している革加工業者さんが車のシート用レザーの需要が落ち込んで困っているという話を聞いた。
ちょうどその後に計画したマンションの共用部で当然本革を使いたいがメンテナンスや耐久性の議論になるとちょっと危ないな、、、と感じていて、そうだ!車のシート用レザーなら耐久性はお墨付きだし高級車用のシートであれば風合いも良い。これだ!と思ってプレゼンテーションしたらディベロッパーの方にはおおいに共感して頂いた。そこで即お願いすることにしたのだ。

そんな経緯もあって今回、この革を作っていただいたミドリホクヨーさんに伺うことが出来ると聞いて即スケジュール調整して視察ツアーに参加させて頂いた。

このミドリホクヨーさん。僕がこれまで取引してきた革工場の規模とは比べ物にならない大きさ。自動ラインも充実していて壮観だった。
車メインの工場なので耐久性とクオリティーコントロールは完璧と感じた。

ただ、僕の本当の好みはクロムなめしではなくタンニンなめしだし、型押しのシボではなく天然シボ、染料にしても吹くより漬けろ、、、、つまり、品質安定の方向とは真逆の方向を向いている訳だけれども、堅いことはいうつもりはない。そこはケースバイケース。現場のニーズに合わせて最適解を探る。そうするとこれが正解でこれが間違い、という議論にはならずに済む。臨機応変に計画をコントロールして使い分けてゆけば良い。

そんな風に引き出しを多く持つことができるのも工場を見るという第一歩から始まる。

今日は他にアルミの鋳造工場を見学。
大変有意義な二日間を過ごさせて頂いた。

ちなみにミドリホクヨー社はあの有名な安全靴メーカー、ミドリ安全のグループ会社です。

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山形へ 工場視察その1

広尾に本社とショールームをおくAD CORE。
昨年は家具の製作でお世話になった。
彼らが自社家具の制作を委託しているのが山形の朝日相扶製作所だ。
この朝日相扶製作所をAD COREの案内ではじめて訪れることが出来た。

実はこの工場、AD COREの商品だけを作っている訳ではなくて僕がお世話になったり知っていたりするほとんどのモダン家具メーカーに対するOEMの供給をしているという貴重な会社なのだ。けっして自社ブランドを立ち上げることはしない。
そしてあらゆる難しいリクエストに答えられるよう、CADCAMのマシンを駆使して最新の工作機械を自在に操る専門集団なのだ。

しかしやはり工場を見るとそうは云っても最後は人の手、人の感性に勝るものはないことを知る。
そんな貴重な機会をいただいたことに感謝。

蔵王、朝日連峰、月山と、スキーや登山で訪れたことがある山形だが、久方ぶりの訪問で車窓の風景も楽しんだ。

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