桑原聡建築研究所

Satoshi Kuwahara Architectural Studio

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2014年11月のアーカイブ

Column

2014年11月 [ 11 entry ]

地盤調査

9月22日に発生した長野県北部の地震で被災された方々にはお見舞い申し上げます。

さて、この地震多発地域で私たちが建築をするということは大変なリスクを背負っていると考えられます。
建築はコストの関係からだけみると出来るだけ地盤の良好な土地であり、かつ、基礎にかかる荷重はなるべく小さい方が基礎にかかる費用が低減できるから望ましいです。
しかし、事業性の問題や、先祖代々住み継がれてきた土地であるなど、様々なファクターがからむとなかなかそうも言っていられないことになります。
だから、プランニングにあたり構造検討を先送りしていると小さな建物でも数十メートルもの杭が必要になってしまったりして、採算上の合理性が見えない泥沼に踏み込むことになります。

20141125.jpg今日は来春着工予定の集合住宅のための地盤調査の報告です。
計画建物は鉄筋コンクリート造4フロアとなりますが、既存建物とほぼ同じ位置に建てますので、本来ならば解体を終えてから地盤調査のためのボーリングを行ないます。
しかし、昨今の建設コスト高騰のあおりからなるべく早い時期に基礎にかかるコストを確定して上部に許されるコストを逆算したいと、今回は庭の空地の一部をチェーンソーで切り開き、力技で小型のボーリングマシンを設置しました。
これらの機械は全て人力で分解して運搬して再組み立てして、と、人海戦術です。

日々更新される速報データをにらみながら土質試験を追加したりして、構造設計は慎重を期しています。
決しておろそかにできない重要な場面なのです。

南イタリアの旅 最後に

旅の間に書いていた日記はこれが最後です。
ずいぶん時間が経ちましたが、最終回です。

今回は旅の雑感。

食事
イタリア人はとても良く食べます。
美味しいものばかりなのですが、僕たちにはポーションが多すぎます。
イタリアだけに限らず昔からこのことは僕たちの胃袋を悩ませてきました。
ちょっと前までは一皿を二人三人でシェアして食べるとお店からは嫌な顔をされることがありました。
しかし、今回の旅ではそのような事は全くありませんでした。
星つきホテルのダイニングでも僕たちは家族三人で前菜一品にセコンド一品、もしくはセコンド一品にメイン一品、あるいは前菜一品にメイン一品が基本でした。
ピザに至っては無理せずに一枚をシェアすればそれで充分でしたし、お店も嫌な顔ひとつせずに、とてもフレンドリーな対応をしてくれました。

信号機
今回南イタリアを千キロくらい運転しましたが、信号機はどれくらいあったでしょうか?
恐らく全部で十数カ所だったかと思います。
こちらにはロータリーという素晴らしいシステムがあります。
また特に都市部では混沌としていて、マナーが悪いと文句を言う旅行者の方も大勢いらっしゃるかと思います。ですが、実はここにはとても重要なルールがあります。
それは徹底した左側優先です。
ロータリーも徹底した左側優先が体に染み付いているから成り立つシステムなのです。
一昔前まで車のドアミラーは左側しか無かったくらいです。
右から車が飛び出してくる事が絶対にありません。
右側から追い越される事も絶対にありません。
そのかわり追い越し車線で後続を確認しないでのろのろ走っていると容赦なく後ろからあおられることになります。
残念ながら現代の日本ではひととひとの関わりに秩序が不足しているのでその代わりに信号機が林立しています。
こんな無駄は早くやめにしたいですね。
信号機一基作るのに何千万とかけているのですから。

と、思っていたら、日本でもロータリーを普及させようとする取り組みが始まっているのですね。
先日、旧軽井沢に新しくロータリーができていました。
しかし、回転する向きが逆になるので慣れるまで気持ち悪いですね。

余談ですけれど、アルフレックスのカーサミア河口湖というリゾート型のショールームがあるのですが、そこの設計はイタリア人なので、ロータリーは反時計回りです。ここで一周した後に気持ちよく一般道路に出て、その後、対向車がくるまで全く気づかずに右側を走り続けたことがあります。怖いですね。

車/燃費
イタリアはガソリンがとても高いです。
リッターあたり1.80ユーロ前後でした。
日本円にすると250円以上になります。
僕たちの使ったフィアット500のメーターにはお勧めシフトチェンジサイン表示がついていました。
このガソリン価格ですからエコ運転が奨励されているのも頷けます。
こんなことでエコ運転しているイタリア人は不在だと思いますが。。。

車/駐車事情
地中に歴史遺産がまだまだ多く眠っているイタリアでは地下駐車場建設はできません。
だから車は路上の指定場所に停めることになります。
車長プラス50センチ程度の縦列駐車が基本ですので、このこと、つまり、前後の車が出られる寸法間隔を予測して停めないと後でバンパーがへこまされてもそれは自己責任です。
逆にこちらが選んだ駐車場所が狭すぎて前後の車両に傷をつけたならばそれは選んだこちらの責任なのです。
そんな具合ですから実はここ数年で革新的にパワーステアリングが進化していました。
僕たちの使ったフィアット500は気味が悪いくらいハンドルがくるくる回りました。

車/グーグル地図
今回初めてiPhoneのモバイルデータ通信でグーグルによる道案内を使いました。
これは完璧です。
日本語で「ロータリー◯番目の出口を右に進んで下さい」などと、どんな田舎の小さなロータリーも見逃すことはありません。
旧市街の複雑な一方通行の迂回も完璧です。
よく以前は同じ所をぐるぐる回り、何度やっても目的地にたどり着けない焦りを感じたものですが、もうそんなことが嘘のようです。

20010925Sicilia-25.jpegさて、次のディスティネーションは既に決まりました。
シチリア、再び、です。
以前、ナポリからパレルモに船で渡ったことがあります。
当時1歳半だった長女と今は亡き妻とともに訪れました。
長女は行く先々で大歓迎を受けました。

そこで次回は、まだ訪れていない、シチリア南東部とマルタをさまよってみたいと思っています。

旅行の話は備忘録にもなるので、僕もついつい力が入ります。
長きにわたり、おつきあいいただき、ありがとうございました。

Works更新のお知らせ(Moctave Showroom)

今年11月に竣工したMoctave ShowroomのWorksをアップいたしました。
ぜひご覧ください。

続 超高齢化社会の新基軸

20141112-1.JPG20141112-2.JPG先日、超高齢化社会の新基軸と題してコラムを書いたけれど、実は、僕も50代半ばにはいって、運動不足なのか、加齢による運動能力の低下なのか、あるいはまたそれらの複合なのか、特に現場で「歳」を自覚させられるようになってきました。

工事現場でひょいっと飛び越えようとしたら根伐りの土手の縁でズリズリっと脚を滑らしそうに。。。
配筋をまたごうと脚を上げたところが、イメージしたより脚が充分に上がっておらず差し筋に引っかかり、おっとっと、と。。。
などなど。
少し前までは笑い話のネタのようだったのですが、最近は本人としては悔しいけどけっこ深刻です。
現場でこんなことしていたら本当に危険だからです。

まだ僕の現場は低い建物が多いから、ビルの上から真っ逆さまなんて心配は無いのですが、それでも用心するにこしたことはありません。

ある程度の現場なら来客用のヘルメットが用意されていたり、大きなところになると安全靴が用意されていたりもするけれども、小さな現場となるとそれらは何もありません。
だから、自分のことは自分で守ることになります。
一方で、なにごとも無理をしない、と自分に言い聞かせる必要もあります。

今日は軽井沢で木造軸組が終わり、内装工事に入った別荘現場のチェックをしてきました。
この現場の大工さんたちは皆さん僕よりずっと年上のベテランばかりです。
皆さん本当にタフです。

南イタリア15

ナポリ
Napoli

20141110-1.jpegついに旅も終わりです。
ナポリに戻ってきました。
14日の旅も長かったようだけど、思えばあっという間に過ぎました。
旅の最終日だけど、やはり僕たちは街をぶらぶら。
そして行き当たりばったりで面白いと思ったものをお買い物したりで過ごします。

走らない人々/急がない人々
ナポリの街中はクルマ、バイク、歩行者が混沌とした様相です。
しかし、信号の無い横断歩道で、車やバイクは停まるそぶりは全くありません。
ドライバーはクルマを止めさせられるのが本当に嫌いなのですね。
で、人が歩道から車道へ歩き出すのを見ると、ちょっとだけスピードを緩めます。
その間合いを横目でみながら歩行者も優雅にクルマとクルマの隙間を縫って歩き抜けていきます。
その身のこなしはまるでリハーサルを終わらせた舞台を見ているようです。
そこでは歩行者は決して走ったりしてはいけません。
走ったり急に方向を変えたりドライバーが予知できない行動をするほうがかえって危険なのですね。
ナポリ人の動体視力には本当に感服します。

バスを停める人々
扉を閉じてすこし走り始めたバス。
それでも運転手に向かって右手をパーの手で停まれの合図をしながら路上をバスに向かってゆったり優雅に歩いてくる人々。
ここでも急ぐそぶりは微塵もありません。
扉を開けてくれたドライバーに「グラーツィエ」と一言、ここでは出来るだけクールに挨拶します。
走って息を切らせてニコニコ、グラーツィエと叫びながら乗り込むような姿を見せるのはかっこ悪いのでしょうね。
僕たちはついついやってしまうようなしぐさです。

20141110-2.jpeg20141110-3.jpeg

『ハッピー・リトル・アイランド 』

20141108.jpgドキュメンタリー映画『ハッピー・リトル・アイランド ―長寿で豊かな ギリシャの島で―』を観た。


ギリシャの離島、イカリア島。
この島の住人は世界のどこよりも長生きで幸せと言われ、「死ぬことを忘れた人々が住む島」として世界的に有名なのだそうだ。


80歳のおじいちゃんが「仕事で体は疲れるが、心は疲れない。好きな仕事だからね。」と語り、

94歳のおばあちゃんが「人生を楽しめないなら死んだ方がましよ」と語る。

このイカリア島の長寿の秘密について、アテネ大学主催の医学会議での発表によると、

・食卓:特に魚介類、果物、野菜、豆類、そしてお茶

・昼寝の習慣
・歩行から農作業に至る日常的な運動
・家族の絆
・少ないストレス
・良好な交友関係
・頻繁な近所付き合いと地元の催事への参加
・高い教育レベル
なのだそうだ。

しかし、一方では、いまギリシャは深刻な金融危機。
失業率が30%に迫り、特に若年層では60%近いという状況だ。
荒廃した首都アテネに見切りを付けて、地方へ、世界へと散っていったものたち同様、この島にIターンでやって来た若者たちもそれぞれ苦労している。
そんな彼らも、一人で全てをやろうとすると壁にぶち当たってしまうのだけど、「助け合い」その結果として「分け合う」ことを学び、未来が開けていく。
そうなると、この島自体がある種のコミューン(自治的共同体)として活きているから、とたんに日々の暮らしが楽しく豊かになる。

日本にもこうした場所がまだまだたくさんあると思う。
僕もできるだけ近い将来、東京を抜け出したい。
しかし、こうしてランチのついでにふらっと映画を観にいける生活もとても捨てがたいのだ。

そしてまた、今、取り組んでいるいくつかの共同住宅のあり方と重ねて頷きながら観てしまいました。

南イタリア14

プローチダ
Procida

20141107-1.jpgこの島はいくつかの映画のロケで知られた島です。
一番知られているのが「イル・ポスティーノ」でしょうか。

ここにはまるで伊根の舟屋のような佇まいの浜辺の街並があります。
もとは砂浜だった場所で浜から上げた釣り船をそのまま一階に引き込んでいたようです。
現在は大半がレストランになっていますが二階以上はそのまま住居として使われています。
この島の建築には階段の作る変形アーチに特徴があります。
こうしたアーチがなぜだかこの島のアイコンになっています。

20141107-2.jpg20141107-3.jpg20141107-4.jpg20141107-5.jpg20141107-6.jpg20141107-7.jpg

ヴェネツィアのブラーノ島のように色とりどりのカラーリングが特徴的な街並を作り出しています。
ブラーノ島の場合は苗字がそのままカラーと連動しているのですが、ここがどうだか私は知りません。
どなたかご存知の方いらしたら教えてください。

ここでもやはり、僕たちは新鮮な魚介類三昧です。
そしてお腹を満たした後、海で昼寝と水浴びです。
こちらはイオニア海です。

20141107-8.jpg20141107-9.jpg20141107-10.jpg

住宅の流通事情

10年前に手掛けた住宅の改修の依頼を受けた。
依頼主は当時の建主ではない。
この家を購入した新しいオーナーだ。
日本では一般的に建築家が設計した個人邸は大抵が特殊なプランニング故に不動産的に流通するのはとても難しいと言われる。
他の中古住宅市場同様に価値が下落することが前提での取引となる。
ここは、欧米とは大きく異なるところだ。
何故だろう。

20141106.jpg日本の商習慣には、新しいもの、無垢なもの、に対する偏愛傾向がある。
例えば、スーパーの牛乳売り場ではたとえ今日すぐに飲むものであっても、より新しい日付のものだけが選び取って買われていく。
ブティックでは、展示品ではなく倉庫から出してきたものを丁寧に包装してもらって持ち帰る。

ところが、海外でお買い物をされた方は驚くとおもう。
牛乳売り場には納品から大分時間が経っているであろうものからまあまあ新しいものまで無造作、無差別にならんでいる。
ブティックでは、頼めば不器用に包装してくれるけど、一部のブランドショップを除くと基本はそのままグシャッと袋に放り込まれたものを持ち帰ることになる。
ここでの取引は、そのものが新しいかどうかにはあまり着目されていなくって、全ては買う人の責任と納得の上で成り立っている。

また、日本的には、前のオーナーの思いが強ければそれだけ何か「念」のようなものをそこに感じる方もあるかもしれない。

そうしたわけで、今回のケースでも、不動産的にはお手頃価格で手に入れることができた。
そこに、新たな価値を生む改修工事を施すことで新しいオーナーに向けて住宅をカスタマイズする。
また、今回の改修工事に関わるのは、全員が新築当時、工事に携わった職人さんたちだから、安心感もある。
こうした住まい方が注目されてくると、不動産の流通にも変化が出はじめ、僕たちが時間と創意工夫を注ぎ込んだ住宅や建築が、建築家住宅市場として、ある尺度での不動産価値で評価される日が来るだろう。

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