桑原聡建築研究所

Satoshi Kuwahara Architectural Studio

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2015年2月のアーカイブ

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2015年2月 [ 6 entry ]

モロッコ−最終回 雄大なランドスケープ

南部モロッコの雄大な風景には圧倒されます。
自然の力強さを感じる風景ですが、砂嵐と灼熱、そして凍てつくような冬の夜の寒さを考えると実際もの凄く過酷な環境です。
そんな過酷な環境でモロッコの人々は機械や車、電化製品といった便利なものに頼ることなく力強く暮らしていました。
最後にそんな風景をお届けします。

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モロッコ−13 南部モロッコの空間

南部モロッコでは建築空間も都市空間もどこもかしこも「細長い」のが特徴です。
泊まったホテルの部屋はどこも出入口から見て奥行き3メートル弱×幅12メートルくらいありました。
幅12メートルは中庭の寸法と同調します。
これで約36平方メートル。
ホテルの客室としてはそれほど小さくはないと思いますが、慣れないプロポーションに最初は戸惑いを覚えました。
これはスパンを決定する横架材である椰子の木の材料寸法から来ています。
横架材を架け渡す二枚の壁は日干しレンガ積みに土塗り壁とした厚さ約40センチの壁です。
壁にはいくつかの穴が開けられていますが、出入り口に加えて必要最小限の採光用の開口が穿たれているだけです。
この壁は回の字型に巡り中庭を形成します。
建物が大きくなると回の字がいくつも反復して現れて拡張していきます。
クサルと呼ばれる集落を形成するようになると居住単位である回の字と回の字の間にまた幅3メートル弱の隙間が路地空間として現れます。
回の字が基本的に直交座標系で構成されているために、隙間に発生する路地空間は直線です。
しかし密度の高いクサルでは路地上部を室内空間として利用することが多いので路地はほぼ正方形のプロポーションでトンネルを形成することが多くなります。
ところどころ上部に吹き抜けたところからは強烈な光が注ぎます。
そして、直線の路地はどこかで必ず壁に突き当たります。
Tの字に分岐している場合は右も左も同じような風景が続いています。
変化による手がかりが少ないので次第に方向がわからなくなってくるのです。
また、見知らぬ街にたどり着いた異邦人の気持ちで考えると、これはいつ路地上から攻撃されてもおかしくない状況です。
外部者はこの、上から知らず知らずのうちに見下ろされている迷路の中、両手を上げて裸同然で歩くことになると思われます。
そんな防御の形が南部モロッコの空間の原理だと理解できます。

そうやって徐々に体を慣らしていくと次第に最初に感じた違和感は薄れてゆき、細長い空間に意外な心地よさを発見し始めます。
伝統的な中庭型の住居(リヤド)やカスバ(城)を改修したホテルでは細長い空間が連続する幅の広い廊下のような空間のあちこちに小さな居心地の良い空間が用意されています。
そこで食事をとっても良いし、お茶をしても良い。
また読書をするも良いし、瞑想するも良い。

細長い空間が連続していくときに交互に現れる壁をくぐるところが結節点として重要なデザインのポイントとなります。
手をかけた建築ではそうした場所が常に美しく複雑な形のアーチで縁取られています。
連続したトンネルの先に様々なアーチが背後に光をたたえて連続していくさまは優美なものです。

サロン型の欧米の住宅とは明らかに異なる線的な空間体験からは多くの言葉を語りかけられました。
そうです。
僕たち日本人の伝統的な住まいにはこうした小さな空間が雁行しながら連続してゆく形式はむしろ多いわけです。
旅の後半、心地よさを感じ始めた理由はそうしたところにあったのかもしれません。

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モロッコ−12 お買い物

モロッコ最大のエクスカーションといっても良いのがお買い物です。
商品を手にしたらバーコードで料金清算、なんていう味気ないお店はごくごく一部のスーパーマーケットのみです。
定価はないから、売る人、買う人、それぞれの交渉と意気込みで値段が決まる仕組みです。
気に入った商品を前にして、お店の床に敷かれた絨毯の上にどっかり座り込み、嘘か本当かわからないようなウンチクを聞き、ミントティーを2杯3杯と勧められ、もてなしを受けなければいけません。
そして最後はお互いに、「お前は俺の大切な友達だ」を連呼しながら握手して現金と商品を交換するのです。

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全てがこれだから最初はとても疲れるのだけれど、慣れてくると商品を買う事そのものがすごく楽しいものになってきます。
この、「お買い物の過程を楽しむ」という価値観はどこか「設計や工事の過程を楽しまないと損だよ」と言いたい僕たちの設計作業に似ていますね。

モロッコ−11 朝ごはん

朝ごはんで供されるムスンメンと呼ばれるクレープがまた実に素朴で美味しいです。
温かいムスンメンにバターや蜂蜜、なつめ椰子の実のジャムをつけて食べます。
ジュースからジャムまで、全て手作り感満載。
逆に手作りでない人工的なものの方が高価なのです。
僕が生まれた頃の日本もまだそんな感じに近かったと思います。
ここでは黙っていても普通にエコロジカルだともいえる素朴な暮らしが営まれていました。

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モロッコ−9 タジン

モロッコのご飯といえばタジン料理。
これは本当に美味しいです。
肉と野菜や豆を鍋に入れ、Ras-el-Hanout(ラセラヌー)と呼ばれるモロッコの万能スパイスミックスと共に煮込みます。
富士山みたいな形状の鍋蓋のおかげで旨みがスープとなって溶け出し、循環対流する仕組みなのです。
実に合理的な鍋です。

モロッコの料理人の多くは女性です。
彼女たちはこの鍋一つでなんでも作ってしまうのです。
それゆえにキッチンは極めてシンプルです。
そもそも薪による熱源が圧倒的なので火力調整なんてできない家が多いわけですね。
だからとても理にかなった料理法なのです。

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モロッコ−8 車

モロッコ人の運転は非常に荒っぽくて恐ろしいからくれぐれもレンタカーで自ら運転する際は気をつけて、と、どのガイドブックにも書いてあります。
また、峠越えの道にはガードレールもなく、よく転落事故があるとも書いてあります。
そんなことだから一瞬躊躇するのですが、自分の興味の赴くままに行く先を決められるメリットは大きいです。
ですから、今回僕はレンタカーを借りて旅することにしました。
結果、大正解でした。
モロッコ人の運転は決して荒くはありません。
南ヨーロッパと同様にラテン系なだけであって、お互いの節度はきちんと守り合っています。

広大な土漠の一本道を走っていると、この人は一体どこまで歩いていくのだろう?と疑問に思うような人々によく出会います。
5人乗りの僕の車には2人分の空きがあるので、そんな人たちを何度か車に乗せてあげました。
僕たちの目的地まで一緒についてきて一緒にあるいてまわり、最後にまた民家も何もないような道端で、ありがとう、じゃあ、と言って消えていきます。
最後にガイド料でも請求されるのかなとも思ったけどそんなこともありません。
彼も異国の旅人との時間を少し楽しんで自分の目的に戻っていくようです。
この国では持ちつ持たれつギブアンドテイクの関係を大切にするようです。

また、ある時、僕が中国で怪しい僧侶につかまされたブレスレッドと引き換えにガイドを頼んで車に乗せたベルベル人のおじさん。
車の前を歩いているあの子連れの女性たちは隣の村まで歩いてゆくので車に乗せてあげようといいます。
女性たちは3人の母親に5人の子供。全部で12人。
こんなに大勢どうやって乗るのかと思ったけれど、後部座席に大人四人、膝に子供4人、計9人が無理やり収まってしまいました。
うちの娘2人は助手席に。
そんな車で未舗装の道をガタゴトと行きます。
途中で川を何本か渡るのだけれど、どれも橋なんかありはしません。
浅瀬を横切る轍に沿って川の中に普通の乗用車でじゃぶじゃぶと入って行きます。
なんともワイルドです。

そんな体験がとても新鮮でした。

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12人乗った僕の車

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石の道しるべが進むべき方向を示しています

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ひとも自転車も水の中にじゃぶじゃぶ入っていきます

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