桑原聡建築研究所

Satoshi Kuwahara Architectural Studio

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2015年8月のアーカイブ

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2015年8月 [ 1 entry ]

セバスチャン・サルガド「The Salt of the Earth」

20150828.jpgビム・ベンダース監督がブラジル出身の写真家セバスチャン・サルガドを撮った「The Salt of the Earth」(原題 Le sel de la terre)を観た。
邦題は「セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター」
邦題からすると何か「ガイア・シンフォニー」のような映画かと思われてしまいそうだが、それは全く違う。

この映画、現在、渋谷東急文化村、ル・シネマにて上映中。
さすがにビム・ベンダースのドキュメンタリー映画はドキュメンタリーを超えた物語になる。
「リスボン・ストーリー」「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」「Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」と、彼が手がけたドキュメンタリーの数は多い。

セバスチャン・サルガドの人生は、
第一章 バベルの塔を逆さにして地獄へと掘り進むかのごとき金鉱の採掘現場にあって、それでもなお夢を追う群衆に人の生の証を見る。
第二章 紛争地域という地球上で最も過酷な生き地獄に身を投じるが、それでもなおそこにある母と子の絆に救いを見る。
第三章 現代文明から遠く離れ伝承をまもり、いまなお生き残る少数民族、あるいは地球の果てで生きる動物の群れに人類と地球のユートピアを見る。
この三楽章で綴られていく。

永遠の時間を感じるモノクロームの超現実的な静止画像が映し出され、そこにその激しい現実に立ち会ったカメラマン本人の静かな言葉が重なる。
すると静止画像はスローモーション映像のように少しずつ動き始めたような錯覚にとらわれる。
途端に観客である僕たちは物凄い臨場感に包まれるのだ。
そして最終章では大きく安らぎに満ちた空気を吸うことになる。
すごいドキュメンタリー映画だなと思った。

そのとき、ビム・べンダースのドキュメンタリー映画は取材の足跡が1本の線を紡ぎながらもうひとつの物語を作り出すロードムービーなのだと理解した。

ちなみに原題となっている「Le sel de la terre(地の塩)」だが、マタイによる福音書5章13節からの引用で「あなたがたは、地の塩である。もし塩のききめがなくなったら、何によってその味が取りもどされようか。もはや、なんの役にも立たず、ただ外に捨てられて、人々にふみつけられるだけである。」とある。
つまり、汚れを清め、腐敗を免れる塩の役目を担う人々がそこにあってこそ、この世の中が救われる。と解釈して良いだろうか。

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