桑原聡建築研究所

Satoshi Kuwahara Architectural Studio

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2015年12月のアーカイブ

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2015年12月 [ 6 entry ]

Works更新のお知らせ(オークフィールド八幡平)

今年11月に竣工したオークフィールド八幡平のWorksをアップいたしました。
ぜひご覧ください。

白金台の現場から

現在工事が進む白金台の現場から。
この建物はオーナー住宅2戸を含む総戸数9戸の共同住宅。
お父様から相続された土地を部分売却してその資金を元手に残り半分に共同住宅を建設する。
現場では先週末に地下一階の躯体工事が完了した。
一番コンクリート量が多い先週末のコンクリート打ちは今回の工事中一番の山場で、作業完了は夜11時を超えたという。
今回の建物、壁の位置がすべて扇型に開いている形状に加え、少しずつズレながら連なっていくため、墨打ち作業、型枠組立作業、鉄筋の配置すべてが難しい工事となった。
さらにすべてが逆梁工法のため、型枠がすべて宙に浮いている状態で、コンクリートを打つ。だから、コンクリートによって大きな圧力がかかると型枠が押されてズレやすいという厄介な点もある。
今回の工程を無事乗り切り基準ができてしまえばそこから先は難しいけれども何とかなるはずだ。
現場監督の表情が明るくなった。

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オークフィールド八幡平、サービス付き高齢者住宅その4

宣言文 PART-3

20151210-1.JPG20151210-2.jpg○ レストラン棟には大きな共用キッチンが備え付けられています。シェフが開催する季節の食材を楽しむお料理会や、お友達どうして食事を作りあったり、お菓子を焼いたり、何かのお祝い会をしたり、と楽しく使って頂くことが出来ます。ここには薪ストーブも備わり、より親密なコミュニケーションを演出します。
○ レストラン棟二階にあるスタッフの事務室には施設によくあるカウンターや受付デスクといったものは見当たりません。代わりにフィックスの大きな窓が共用部に対して開かれ、美しい灯りの下でそれぞれの仕事をしている様子が伺えます。スタッフもここでは対等に共同生活者の一部なのです。

オークフィールド八幡平、サービス付き高齢者住宅その3

宣言文 PART-2

○ 2階建ての住居棟と2階建てのレストラン棟をそれぞれ別棟として計画しました。レストランへ行くことが日常の大事なおでかけとなるように配慮されています。(ただし、渡り廊下でつなぐことにより建築基準法上は不可分の一棟です)
20151209-4.JPG20151209-1.jpg
○ 住居棟内に2カ所ある階段は踏み面303蹴上げ約155と基準値を遥かに下回る緩やかなものとなっており、日常の運動を安全にサポートします。
○ 住居棟中廊下には3カ所のスロープがあります。建物を敷地の高低差に馴染ませるために敢えて採用しました。バリアフリーの計画手法からすると逆行するようですが、建物を一歩出れば起伏があるのは当然。日常の運動の中に階段やスロープを敢えて取り込むことは決して非常識なことではありません。
○ 住居棟には小型エレベーターが一基備えられています。しかし、これは自力で歩行するのが困難になられた方に限り使用していただくことができるものとして計画されています。
○ 共用部は全て土足エリアです。住戸の玄関を出たらそこから「お出かけ」が始まります。
20151209-3.JPG20151209-2.JPG

オークフィールド八幡平、サービス付き高齢者住宅その2

20151208-1.jpg20151208-2.JPG20151208-4.JPG設計図書は単なる図面ではありません。
特に今回のプロジェクトのようにコストが厳しくなると、背に腹は変えられず、ともするとコンセプトを忘れ、ただただ減額に向かって突き進んでしまうことがあります。
そこで、今回の設計図書のトップページには宣言文を記載しました。
それをお見せします。
果たして宣言の通りにモノは出来上がっているでしょうか?

PART-1

○ 本計画は老人施設ではなく人生経験の豊富な方々が集まって暮らす共同住宅(サービス付高齢者住宅)です。過度に機械装備品に頼ることなく自立をサポートしながら楽しく暮らすことができるシニア住宅とします。
○ 敷地は南に岩手山、北に八幡平、東に姫神山を望む自然景観に大変恵まれた立地であり、この貴重な資産を最大限生かした居住環境を創出します。
○ 敷地の緩やかな高低差を生かした計画とします。また、敷地から建設残土は一切搬出いたしません。
○ 街道沿いの歴史ある宿場町のような美しく連続した屋根並みを特徴とする景観を創出いたします。
○ 特に夕暮れのシーンをデザインします。レストラン、住居、トップライトのそれぞれの窓に美しいあかりが灯る時、これを目にした誰もが立ち止まり、生きることの幸福感に満たされる、そんな様子を作り出すことを最大のデザインテーマと捉えています。

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オークフィールド八幡平、サービス付き高齢者住宅

20151207-1.JPG20151207-0.JPG20151207-2.JPG20151207-3.JPG20151207-4.JPG岩手県の八幡平で設計を手がけてきた高齢者住宅第一期32戸が無事竣工し、12月1日に竣工式典が行なわれた。

ここに、CCRCという言葉がある。
Continuing Care Retirement Community の略で、健康時から介護時まで継続的ケアを提供するアメリカにおける高齢者施設のコンセプトである。

今年2月に政府、「内閣官房まち・ひと・しごと創生本部」において「日本版CCRC構想有識者会議」が設置され、ここがまとめた、日本版CCRC構想では、
「東京圏をはじめとする高齢者が、自らの希望に応じて地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療・介護が必要な時には継続的なケアを受けることができるような地域づくり」
を目指すものである、と定義されている。

この構想の目指すところとしては、
1、高齢者の希望の実現
2、地方へのひとの流れの推進
3、東京圏の高齢化問題への対応
の、3つがあげられている。
さらに、アメリカのCCRCは塀に囲われたゲーティッド・コミュニティを示しているが、日本版CCRCでは、「地域に開かれた街まるごと」を目指す、とされている。
まさに、地方創生のエンジンとして「日本版CCRC」の可能性を捉えることができるわけだ。

岩手県岩手郡旧松尾村柏台地区。
2005年(平成17年)9月1日に、同じ岩手郡の西根町・安代町と合併して八幡平市となり廃止された地域だ。
標高2,038mの岩手山の北側山麓に広がる標高約500メートルの高原地帯である。ここから見上げる岩手山は堂々たる稜線を描き、アルプスの景観に匹敵する美しい景観を形成している。
しかし、一方で八幡平市は合併して高齢化率が薄まったとはいえ、5年前に行われた調査では55歳以上の人口比が48.99%となり、準限界集落、つまり限界集落の予備軍と定義される50%に限りなく近づきつつある地域である。

ここが、今回私が取り組んでいる高齢者共同住宅の敷地のあるエリアであり、地区単位で言えば八幡平市全体よりもさらに事態は深刻であろうと思われる。
しかし、ここには前記した見事な景観に加え、良質な温泉、そして医療・福祉施設の他、教育施設も用意されている。
我々都会人で自然回帰志向を持つものにとっては、移住に関しての恰好の環境がすでに整っているのだ。
また、地域住民に対しては避寒利用、首都圏住民に対しては避暑利用と二毛作利用も期待できる。

今回、私たちのプロジェクトの竣工は、東北初のCCRCとして位置づけられ、大きな注目を集めることとなり、12月2日付け岩手日報の一面トップを飾るなど、好スタートを切った。
竣工式典では八幡平市長、岩手県議会議員、別件のクライアントでもある東八幡平病院理事長ほか大勢の参加と賛同を得た。

2010年からプラチナ社会研究会でCCRCに関連するセミナー、分科会、視察などを通じて約6年に渡りCCRCの啓発と普及に努めてきた、三菱総合研究所プラチナ社会研究センターの主席研究員である松田智生さんの応援も頂きながら、今後の動きを見守っていくことになるが、こうした半ば公共的な仕事は、普段特定のクライアントのための仕事ばかりしてきた私としては初めてである。

しかし、これも最初からCCRCに乗って進めてきたという訳ではなく、今回もいつもと同じように、サービス付き高齢者住宅として32人の入居者のために、気持ちよく快適で美しい住宅をつくることだけを考えてきた訳で、特別なことをした覚えはなく、とにかく「施設」にはしたくない、と、ただそれだけのことなのだが、結果、CCRCの目指すところと合致し、後付けながらも日本版CCRCとしてご評価頂くこととなった。
その手応えを大きく感じることとなったのは、感無量である。
竣工式典では、ともに戦ってきたクライアントともその気持ちを分かち合った。

このプロジェクトは今後、第二期、第三期と進め、最終的には中庭を囲う1ヘクタール約100世帯の集落が完成する予定だ。
また、近隣では現在、東八幡平病院の増改築の計画も進んでおり、この地域の沿道景観を作り出しつつある。
さらに柏台近隣地域に発展させ、若手の雇用と移住を連鎖させることで高齢化を緩やかに食い止めるサスティナブルな地域づくり構想を夢見ている。

さてこの住宅、寒冷地の宿命なのだが、グリーンシーズンに工事を行う関係上、どうしても竣工と同時に一年中で最も過酷な冬がやってくる。
この冬を乗り切り、また多くのフィードバックを得ることでさらにブラッシュアップしていくこととなろう。
この地域での仕事は、いまから二年半前のたまたまの偶然の出会いから関わることになったのだが、いまやライフワークになると確信している。

詳しくはオークフィールド八幡平まで。

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