桑原聡建築研究所

Satoshi Kuwahara Architectural Studio

  • 文字サイズ
  • 小
  • 中
  • 大

home

Column

離島の課題

Column

離島の課題

二年前のブログで『ハッピー・リトル・アイランド 』 という映画について書きました。
今年は実に私自身、離島によって癒され、離島によって考えさせられました。
そして日本の離島の状況も『ハッピー・リトル・アイランド 』に描かれていることと同じ、ということを知りました。

20161008-1.jpg

離島の課題、それは言うまでもなく人口減、人口流出です。
高齢化による自然減は仕方ないとして、子育て世帯の流出、或いは子の進学、就職による流出をどうやって抑制し、今後転入による増加に転換させていくか、が、ここでの課題となります。

課題解決の目標として筆頭に挙げられるのが教育への不安の解消です。
小学校までは良いのです。そこでは小規模校ならでは、の特色ある教育が実現されています。むしろ都会では望めない、のびのびとした環境がとても魅力的です。ところが、中学校、高校へと進学する時期になると、競争原理のはたらかない環境により不安の時期が来るようです。また教育を後押しするための周囲の経済力の低さも根深かく関わりあっているようです。もっとも移住して欲しい子育て世代が不安を感じるのはココです。

教育水準の問題は高学歴人口率との相関関係が世帯収入との相関関係を上回るという調査結果がでています。
さらに、東京では学力レベルが突発的にグンと上がる地域があるのですが、この背景には大規模高額マンションによる高学歴人口の大量流入があります。

しかし東京の場合も、結果的には中学校、高校へはかなりの数が区外の私立へと流出します。
つまり、教育への不安を取り去ったところでやはり島の外に出ていく動きは避けることができないといえるでしょう。
だからこそ、その後も親世帯は残留し、いったん島の外に出た子が戻って来られる環境を作るべきなのです。

そのためには、地域のアドバンテージを認識し、共感し、それを活かした賢い生き方の選択肢を幼時から理解し、発見し、共有する取り組みと、地域を離れずに生涯暮らし続けていける環境づくりが必要なのです。
一方、食の安心、安全、環境重視のライフスタイル等、離島のアドバンテージについて、むしろ高学歴世帯の理解が高いと読むことができます。
つまり、環境づくりのキーとして「高学歴住民を核としたネットワーク」と、それを実現するために地域の資源となる、高学歴人口の保護と流入をどのように後押し優遇するかがポイントになるように思います。

このまま日本の島々が居住放棄地となり続けていったとしたら、不法移民、不法占拠など、治安への不安が極めて深刻化する時がやって来るでしょう。
僕はこれまで離島の問題を地域振興、観光の問題と考えて来たところがありましたが、これはほんの入り口の部分に過ぎなかったことがなんとなくわかってきました。離島に人が住み続けられるように環境を整えることは、「争いを伴わない大切な防衛手段の一つである」ということがことの本質なのではないかと思い始めているのです。
このことは、佐渡で北に向けられたレーダー基地を見たときに感じた違和感から強く確信しました。
確かに五島列島の福江島北部にも自衛隊の管理地がありました。なんでこんなところに?と思ったけれど、最初はスルーしていました。
考え過ぎでしょうか?

僕は政治的な話は得意ではないので、これ以上はやめておきましょう。

さて、今年は小値賀島、野崎島、福江島、久賀島、そして佐渡ヶ島と、5島を巡りました。
すべての島で見えてくるのは、全く同じ課題に同時的に取り組む様子が見られることです。
これはとてももったいないことです。
今こそ全ての離島が一致団結して同じ目標に向かって進む時なのではないかと思います。
また、先ほど環境づくりのキーは「高学歴住民を核としたネットワーク」ではないかと申し上げましたが、高学歴住民は、永住させようとするとどうしても無理が生じます。渡り鳥のように定住せずに次々と居住環境を変えて行くライフスタイルを認めてあげなければいけません。
ですから、ここで「離島ネットワーク」が重要になるのではないかと思うのです。
離島ネットワーク内で人を循環させ、育てる取り組みです。
そのために国の予算を使うなら誰もクレームはつけないこととおもいます。

ここまで建築については何も語ってきませんでした。
しかし、人が集まれば文化(カルチャー)が生まれます。カルチャーが生まれれば自然に建築文化が生まれます。つまり、人が建築を生み出し育むのですから、先ず人が集まり交わることが重要なのです。

今年最後の離島行きは来月、鹿児島県の徳之島を予定しています。徳之島三町のうちのひとつ、伊仙町の大久保町長さんをはじめ、役場の方々との交わりも予定されています。
今年の夏前には、たまたま海外渡航の代わりとして思いついたツーリズムとしての離島巡りでしたが、最後は地域活性という大きな課題に辿り着きました。

徳之島訪問、今からとても楽しみです。


PS
ところで、こんなコラムを書いていたらこんな記事を見つけました。

政府は5日、国境にある有人離島を保全するため、住民の生活支援を話し合う有識者会議を開いた。政府は2017年度に有人離島を支援するため約50億円の交付金を創設し、島への往来にかかる運賃や、特産品などの輸送費の引き下げにつなげる方針を説明。会議の議論を踏まえ、政府は来年春にも有人離島保全の基本方針をまとめる。 2016/10/5 20:39 日本経済新聞電子版

ここで「国境にある有人離島」と限定されているところ、予感が的中していました。
もっとも、防衛予算約5兆円に対して50億ですからほんの僅か0.1%なのですね。

各種ランキングに参加しております

にほんブログ村 住まいブログ 人気ブログランキング マイホーム 住まいる Blogランキング 住まい

Comments

この記事に対してコメントする *は必須項目です。

 

Trackback

Trackback URL : http://www.s-kuwahara.com/cms/trackback/780

Page Top