桑原聡建築研究所

Satoshi Kuwahara Architectural Studio

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2021年1月のアーカイブ

Column

2021年1月 [ 11 entry ]

I'm home. no.110 2021 Mar(2021年1月16日発売)に連載のお知らせ

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I'm home. no.110 2021 Mar(2021年1月16日発売)に連載のお知らせです。
連載第11回目は、前半では設備計画について、後半には着工から上棟までを解説しています。連載はあと1回を残すところとなりました。どうぞ書店などで実際にお手にとってご覧下さい。

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I'm home. no.110 2021 Mar(2021年1月16日発売)に連載のお知らせ

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I'm home. no.110 2021 Mar(2021年1月16日発売)に連載のお知らせです。
連載第11回目は、前半では設備計画について、後半には着工から上棟までを解説しています。連載はあと1回を残すところとなりました。どうぞ書店などで実際にお手にとってご覧下さい。

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目黒東が丘の住宅K邸-9

もともと鬱蒼とした大木の繁る林だったこの目黒東が丘の住宅K邸の敷地には南側に向けて少し傾斜があります。入口からは斜面に沿って上り勾配になります。また、同族で所有していた広大な土地を分筆しているため、今回の土地は完全な旗竿敷地です。前面道路からはちょこっと立面が見えるだけでアプローチの造形が立面となります。そんなちょこっと見える立面に少しだけ工夫を施しました。それが基礎の一部をキャンチスラブにしたことです。アプローチ側から見た時に立面が地盤面から浮いて見えています。アプローチからは室内の階段と同じ寸法で作られた5段のRC階段を登り、庭師F氏の手による玄関に至る石畳のスロープを進むのですが、その時、正面に常に軽やかに建物が浮いて見えているところがチャームポイントです。ただそれだけのことなのですが、この建物のスリットから水や風といったここから流れ出るものの気配を感じていただけたら嬉しいです。
アプローチの先にある玄関扉は高さ1800を切る寸法で作っています。誰もがここで自然にお辞儀をします。ここも重要な部分です。玄関をくぐると天井高は一気に約7.5mに達します。ここからこの住宅のすべての要素が見渡せます。この住宅には廊下や単なる階段はありません。1階中央を東西を突き抜ける空間は玄関空間と一体の階段の一部だったり、さらにその先にシームレスにつながる洗面空間だったりします。緩やかな階段とアートがこの空間の一部となりながら二階へと視線を導きます。二階壁面に設置したレリーフがアイストップとなっています。階段を登りきった2階正面の正方形の開口はピクチャーウィンドーとなり、もともとこの敷地にあった枝垂れ梅の美しい枝ぶりが移植と剪定により絵のように再生されています。
12月27日に行われた内覧会と1月9日に行われた引き渡し会では朝から晩までここで時間を過ごしました。常に温度計を手に、床・壁・天井の温度を計測してまわりましたが、何処も20度から22度の範囲で見事にムラのない室内気候が実現できていました。しかも全く風を感じないところがなんとも穏やかな空間でした。二日とも晴天に恵まれたことから室内に差し込む太陽の光線が移ろい変化していく様を見ながら、たくさんの新たな発見をし、またお別れもしました。住宅は設計半分、これから始まる暮らしが半分。クライアントの暮らしが始まればクライアントの色に染まり、また、年を経るごとに徐々に変化していきます。そこがまた楽しみなのです。

それでは長くなりましたが今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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目黒東が丘の住宅K邸-8

この目黒東が丘の住宅K邸では外部に大物の工事が二つありました。それはリビング東西の大型開口を縁取るステンレス製の飾り枠とアプローチのステンレス製庇です。これらは実施設計段階で構想していたものの重量、撓み、取り付け詳細など充分な検討ができていない状態で現場が進行していたのを見落としていました。構造設計のG氏からは相当突っ込まれ担当のN君はしどろもどろになる事態です。
大型開口を防火戸にしなければいけないため、フィックスであるにもかかわらず外側に防火シャッターを取り付けています。玄関から見上げる位置にあるこの開口にただシャッターが付いていたのでは興ざめです。シャッターを目立たなくする目的で奥行き450のステンレス製の四方枠を東西二箇所に取り付けることを構想しました。これをステンレス6ミリの厚板で作ると二箇所合わせた重量は軽自動車1台分くらいの重さになります。ところが重量を軽くするために、材料を薄くすれば軽くなるけれど今度はたわみが出てしまいます。たわまないようにリブをつけて補強すれば分厚くなってイメージと違ってしまいます。また、予算取りに余裕があったわけではなかったため、コストダウンも同時におこなわなければなりません。様々に検討した結果、厚さ4ミリにサイズダウンしたステンレス2B材で制作することにしました。多少のたわみが出てしまいますが逆に排水の勾配がたわみにより自然にできるためこれを良しとしました。
次にゲートの庇です。私はもともと日本の住宅の茶室や数奇屋の門の軽やかで詫びた佇まいをイメージしていたので多少の揺れや撓みをを許容した上で水平調整の必要性やたわみの調整、現場での組み立ての手順などを構造設計のG氏及び現場と打ち合わせしていきました。(続く)

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目黒東が丘の住宅K邸-7

私はプロジェクトの進行に合わせて家具・カーテン・アートの提案も進めていきます。クライアントサイドで調達可能であれば無理強いはしませんが、設計と一緒に考えていくことはクライアントの楽しみにもなります。この目黒東が丘の住宅K邸2階リビング中央に置かれたバーガンディー色の堂々としたソファーはイタリア・カッシーナ社によるものです。これもたまたま二年前の新商品の営業で私の事務所を訪れたカッシーナ・イクスシーのKさんが持ってきたものです。私は写真にあったこのソファーの後ろ姿に一目惚れしてすぐに平面図にプロットしたものです。通常壁を背にしておかれることの多いソファーですが、今回の空間ではリビング空間の中央に象徴的に置く事を意図しています。後ろ姿が大事なのです。この時はいつもと違って製品に直接座ることなく想像で採用を決めた初めてのケースです。採用と言ってもまだこの段階ではクライアントの了解を得ていたわけではないので私の勝手な妄想上の話ですが。かなり高価なものなのでどうなるかなと思いましたがこれをお見せしたらクライアントもたいそう喜んでくれてすぐに採用がきまりました。
このあたりまでくるとコミュニケーションも阿吽の呼吸になってきます。
ダイニングテーブルもチェアも決まり次にアイストップとなる壁面に幾つかのアートを提案しました。これもこれまで幾つかの案件でご一緒させていただいているギャラリーさんとのコラボとなります。(続く)

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目黒東が丘の住宅K邸-6

実は今回の目黒東が丘の住宅K邸は、これまで何度かお世話になっているイタリアのシステムキッチン、ユーロモビル社を取り扱っている藤屋の元営業担当Wさんのご紹介で始まったプロジェクトです。某ハウスメーカーさんの設計内容に違和感を感じ始め自分で素材を研究し始めたクライアントの奥様(当時は婚約中)がショールームに飛び込みで訪ねて行き、たまたまショールームにいたWさんに相談したのだそうです。その時Wさんはすぐに私ならきっとこの方たちの思いを実現してくれると考えたそうです。
私も依頼があった時はちょうど雑誌「アイムホーム誌」での連載の構想を練り始めた頃でしたので原稿の構想と実際のプロジェクトの進行が同時に進む面白さを覚えました。(続く)

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目黒東が丘の住宅K邸-5

全館空調を行うとき、断熱と気密性能をひたすら追求する必要があります。そのためには現場の職方の理解と協力が欠かせません。いくら設計図書に書いてあっても現場の職方が外気の流れを理解してくれなければいけません。この程度ならまあいいかと目をつむりたくなる小さな隙間から空気や熱はだだ漏れになります。

職方といえば今回の目黒東が丘の住宅K邸はでは建築工事を担当するK工務店以外に幾つかの分離発注を行っています。
これはいつもの私のスタイルなのですが、ここは譲れないと考えるアイテムについてはそれぞれお付き合いのある職方が直接私の設計のために腕をふるってくれます。家具工事は今回相見積もりで参加したY工務店の家具製作チームによるものです。残念ながらY工務店は建築工事では契約に至りませんでしたが、以前お願いした工事での家具工事の腕を評価してのマッチングとなりました。普通は嫌がられるところですが、仕事を終えてみてまた次も一緒にチームでやりましょうとお互い申し合わせているようです。嬉しいことです。また、照明についてはほとんどの案件を一緒に取り組んでいる照明デザイナーN氏とN氏がかつて所属していた照明機材を取り扱うメーカーであるライティングシステム社に担当してもらいました。デザインだけでなくリーズナブルな部材調達も一気通貫でできるところがメリットです。造園は造園業者というより「庭師」であるF氏とF氏の奥様に担当してもらいました。彼らは以前、私の設計した湯河原の現場でお世話になり、敷地に埋まっている石を掘り出しそれらを積み直すことで見事な造園をたった二人で作り上げてしまう素晴らしいガッツと腕前を評価しての要請となりました。実にスペシャルなチームです。その代わりぶつかり合う時は物凄いです。。。。それでもさすがプロ同士です。感情が尾を引くことはありません。それは参加している皆がより良いものを追求していることを知っているからです。(続く)

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目黒東が丘の住宅K邸-4

この目黒東が丘の住宅K邸は全館空調で行こう。そのような方針を掲げたある日、事務所の扉をノックして飛び込みの営業に来られたのが、これまでビル用の全館空調システムを多く手がけてきた空調・防災機器の専門メーカーである協立エアテックのA氏でした。いろいろ話を聞くうちに面白い商材を持っていることを知りました。それが台湾のデルタ電子というパソコンの冷却ファンを製造しているメーカーの小型ファンでした。通常の全館空調はダクトを天井内に這い回しますので梁を避けながら配置すると天井懐は少なくとも600程度になってしまいます。しかし、この小型ファンを吹き出し位置に設置して天井内を負圧にすればダクトレスで天井内に解放した空調吹き出し空気を必要な位置まで引っ張ることができるわけです。このファンは極めてアナログでシンプル。電子制御をしているわけではないので直感的に強・中・弱・切りの4段階制御(切り位置でもじんわり空気が漏れてくる)で各空間の多少の温度ムラを作ることができるのです。同じファンを横向き壁設置、天井下向き設置、カウンター上向き設置と、どの方向どの納まりでも対応できるところも優れもの。そして一台あたりわずか数千円という価格も魅力的でした。早速現物見本を取り寄せ、天井・壁との取り合い、家具に組み込む場合の納まりを検討しました。また、全熱交換器の室内吹き出し空気を空調機の吸い込みに100%送り込み、全熱交換器の排気側の吸い込みは一番居住空間から遠く空調吹き出し口のないトイレ・脱衣室天井でチャンバーを形成することによりカタログ数値以上の効率を狙いました。こうした部分の細かな細工は計算ではなく空気の気持ちになってあくまでも直感を重視して考えていきました。(続く)

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