桑原聡建築研究所

Satoshi Kuwahara Architectural Studio

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2022年10月 [ 1 entry ]

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)での計画に思う

降雨量が年々更新される状況から痛ましい自然災害が絶えず起きるこの地球環境の変化は我々の設計に大きく影響を与える要因の一つとなっている。

そのような中土砂災害防止法の改正を受け、基礎調査を経て土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の指定が始まり、指定区域での建築が大幅に制限されることとなった。
制限というが、実際には犠牲者ゼロを目指して区域内には建てさせないための法律となっている。したがって設計事務所も工務店もレッドゾーンでの建築相談はいかにして避けて通るかとの暗黙の示し合わせがあるようだ。
役所に相談に行ってもどこか安全な場所に建てるよう建主を説得していただけないでしょうか、、、といわれることもしばしば。
ところが現在相談を受けている案件のうち二つがこうした区域を含む案件だ。
どちらも建主は寝耳に水で、いつの間にか指定されており、さて困ったどうしよう!となって相談に来られたケースだ。
そのうちの一つはさらに公園法の網掛けもされていて、土砂災害的には堅固な建物を作らなければならない。しかしその一方、公園法では簡易に除却できる建物でなければならない。簡単に作れて壊せるけれどそこに建っている限り人の命を守ってくれる、3匹の子豚さんも考えつかない4匹目の子豚さんの家が求められている。

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僕はこのような相談を受けるとなんとかしたいと立ち上がってしまう。もちろんただ建てるだけではなく、こだわりと現実の間でもがき続けることになる。そして協力を求めた構造・設備や施工者からは桑原さんの案件はややこしい、と小言を言われるのだが、その実新しい学びを楽しんでくれているのだと信じることにしている。

昨日は都内文京区の土砂災害特別警戒区域での計画について東京都庁に相談に行った。この敷地はわずか200m2の敷地の中に高低差が約10mあり、ごく一部だがレッドゾーンが入っている。レッドゾーンを敷地から除外してしまえばそれで計画は通常通りできるのだがいかにも取り除きましたという感じがしてどうも形が良くない。その上レッドゾーンに手を加えることなくそのまま残すわけだから土砂崩壊の危険性はそのまま放置することになる。計画者としてそれでは倫理に反する。そこでこの部分を敷地に取り込んで計画したいと考えた。先週電話で相談したところよく分からない返答が返ってきてこれはやはり対面で話を聞かないとダメだなと感じてあえてアポなしで向かったのだ。最初は警戒されて遠回しに当たり障りのない対応をされていたようだが踏み込んで話を聞くうちに上司も加わりやっと本音を引き出すことができた。要するにこうした案件では危険性を顧みずに法的に通るからと安易に計画されてしまうことを警戒しているようだ。都心のレッドゾーンの場合、新たに安全な建物を建てることにより現状の地盤崩壊の危険性を改善することになることが明白であれば建てさせない理由はないはずなのだ。そこで焦点となるのが区画形質の変更に当たるかどうかで、つまり開発行為になってしまうと手続き上もテクニカルな問題上もまず不可能という答えにならざるをえないようだ。その場合特に形の変更について地盤面を一定以上切盛することがあってはならないことになる。

事業性の問題もあるようなのですぐに進むというものでもないかもしれないが新たな学びを得ながら正しい道を模索しているところだ。

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