桑原聡建築研究所

Satoshi Kuwahara Architectural Studio

  • 文字サイズ
  • 小
  • 中
  • 大

home

Column

デザインのアーカイブ

Column

デザイン [ 46 entry ]

陰翳礼讃

東京の自宅を引っ越しして約2ヶ月経った。その間に八幡平の家も引っ越ししたので慌ただしく、東京の家を引っ越してもうそんなに経ったのかと思うくらいあっという間だった。
未だダンボールの山が残されていることは変わりない。
断捨離を実行するにはチマチマとやっていたのでは一向に埒があかない。僕にはまとまった時間が必要なようだ。
とはいえ未開封のダンボールの所有者はそのほとんどが浪人中の娘にあるわけだから急かすわけにもいかないというのが実態だ。

20180914.jpeg

引っ越してみて驚いたことがある。
これまでの暮らしでここ数十年間支払い続けてきた電気代がおおよそ3分の1になったことだ。
これは驚きである。
前の住宅は鉄筋コンクリート造の二階建て住宅で築年数約30年。断熱はとても怪しい。何よりも南向きの大開口があることと陸屋根(天井)の輻射が激しく、夏と冬はエアコンがフル稼働となる。しかも動力を使用していたので請求は電灯動力合わせて2本となる。
広さは今よりも25%増しなのに加えて巨大な吹き抜けがあるので負荷は大きいのは当たり前なのだが3倍の開きとなるとなかなかの金額だ。
今のマンションも築年数は同じようなもので断熱は極めて怪しいが、3階建ての1階であり、鬱蒼とした木々に囲われているために直達日射がないということで負荷の変動が少ないことが大きな要因だろう。引っ越して以来エアコンは24時間かけっぱなしなのだが結果は良好だ。
ついでにその前住んでいた港区のタワーマンションの時の履歴もチェックしてみた。
ここは中間階とはいえ角住戸のため外部環境の変動を受けやすい住宅だった。
面積が今よりも25%小さいにもかかわらず電気代はやはり今の3倍だった。家族数がこのころは4人だったこともあるかもしれないけれど、それにしてもその差は大きい。

夏の猛暑が年々酷くなっているのを横目に、陰翳礼讃の時代に突入したなという気がする。南向きよりも北向き。遮るもの一つない眺望よりも落葉の木々に囲まれた環境。ツライチの外観よりも大きな庇に彫りの深い陰影のある外観。建築のセオリー、価値観が大きく変わりだしている。

寂しいお知らせ

またまたすっかりご無沙汰してしまいました。

寂しいお知らせがあります。
昨年夏から一年とちょっと、私が設計に関わった岩手県八幡平市のサービス付き高齢者住宅「オークフィールド八幡平」での暮らしに急遽終止符を打たねばならなくなりました。
2012年から設計に携わり、2015年12月にオープンしたサービス付き高齢者住宅「オークフィールド八幡平」はこの7月に事業継承が行われ、事業継承者として名乗りを上げた医師が経営する新会社が運営を開始しました。
当初は「生みの親の一人である桑原さんにはここで今のまま暮らし続けていただきたいので、これまでの運営を全く変えるつもりはありません」と明言してきた事業者でしたが、やはり、いざ経営を手中に収めると次々と変更に次ぐ変更が始まり、話し合いで決めたかに思えた約束や取り決め事もわずか数日で覆されるというようなことになり始め、何度も旧事業者が仲裁に入ってくれて留保を懇願されましたが、最終的に撤退せざるをえなくなりました。
というようなわけで、ここで一人暮らしをしていた小学校4年生の娘も、毎週東京と八幡平を新幹線で往復していた私も、暮らしの場の全てを東京に引き揚げることになりました。

これまで2年半にわたり、高齢者住宅でありながら全く加齢臭のしない、理想的なコミュニティーを作り上げるために諸々発生する「イレギュラー」をお互い話し合いながらそこに自分自身の暮らしも紡ぎ合わせ、旧事業者とともに二人三脚で作り上げてきたオークフィールドでしたが、そこには、私や私の娘のような高齢者以外の居住者を内包することを含め、サービス付き高齢者住宅本来の目的とは相反する要素が数多くあり、新事業の主幹からは切り捨てざるをえないものが多く含まれているという判断があったかと思います。

また、何と言っても私が作ろうとしているコミュニティーは魅力にはなるけれども利益は生みにくい。
やはり、介護保険を目一杯引き出すことが安定した事業収益確保へのステップであるということが経営判断の核心だったと思われます。

私は医者も弁護士も建築家も国家資格によって立つものは全て等しく「世のため・人のため・地域のため」を旨とすべしと教わってきたし、思い込んできたところがありますので、私の判断が甘かった面は否めません。

さて、そんなわけで「スーパーホスト」ステータスもいただき、世界中のゲストさん達から大好評だった「Airbnb」ホストの座からもこの8月末で私は引退し、オークフィールドAirbnbアカウントは閉鎖します。
また、岩手県のご担当者、そして消防署のご担当者に助けられ、ご協力頂きながら苦労して取得した民泊事業もわずかふた月で取り下げます。

娘は小さな山の学校の一年をとても愛し、また、私もPTAの皆さんと家族ぐるみでお付き合いさせていただいたり、地域活動に参加させていただいたり、と、これまで東京では経験することのなかった濃い経験をさせていただきました。
私自身、ひとり親ということもあり、地域の皆さん、及び旧オークフィールドスタッフの皆さんには本当に助けられました。
また、八幡平だけではなく盛岡広域でもたくさんの大切な出会いがありました。
そして何よりも、清々しい夏の朝、目の覚めるくらい鮮やかな紅葉の秋、白銀に覆われた雪原にシュプールをつける冬、そして長い冬が終わり一斉に花が咲き、木々が薄緑から濃緑に変化する春、これだけの鮮やかな四季の変化をこの目に焼き付けられたことは娘にとっても私にとっても一生忘れることのない経験となりました。

私のAirbnbをご利用いただいた多くのゲストが指摘している通り、デザインはすばらしい、ロケーションも抜群。しかし、やはり何と言ってもそこで受けたもてなしやコミュニケーションが何よりもすばらしい!とのありがたい言葉はかつての姿。ここ数ヶ月のオークフィールドは僕たちにとっては居づらいコミュニティーに一変してしまいました。
かつてエントランスホールを兼ねたレストラン、ラウンジに行けばいつも誰かがいて、一人で仕事をしながら過ごしていても誰かの気配を感じる場所だったのが、今は誰もいないガランとした空間に変貌し、時折見かけるスタッフもみな仕事に追われピリピリしています。
この場所の雄大な景観にふさわしいスタッフのおおらかさや温かい気配は感じることはできなくなってしまいました。
空間そのものは全く変わらないのに、そのホスピタリティーはこんなに簡単に変わってしまうものなんだなあ、と実に驚きです。
ここで娘と学校帰りに寄り道していく娘の友達が、「ただいま!」と帰ってきて、入居者のおじいちゃん・おばあちゃんたちに混ざり共に宿題をし、遊んでいたかつてのファミリアーな姿は想像すらできなくなってしまいました。

公共の公園に「大きな声を出して遊ばないでね」という看板が立ち、遊具が取り外され、代わりにお年寄りのためのベンチが置かれる今の時代、やはり子供は厄介の種なんでしょうか?
友達を連れてくることや共用部にあるピアノを弾くことはもちろん、共用部のキッチンを使うことですらクレームを受けるようになったここ数ヶ月はできるだけお出かけし、外で食事し、共用部をできるだけ利用しない暮らしを心がけてきました。
私がデザインした集合住宅での理想的なコミュニティーライフとは真逆の暮らしです。
そんな窮屈な暮らしともこれでお別れです。
娘はすでに東京で私と一緒に暮らすことを心から楽しみにしているのです。
そしてまた、私は事業者がいつかコミュニティーの大切さに気づき、かつての姿がここに復活することを願っています。

P1130604.jpegP1130602.jpeg

さて、今日は今から娘の学校のクラスのお母さん方が開いてくれる、送別会に行ってきます。
持ち寄りのポットラックパーティーなので、僕も生ハムとチーズ、そしてデザートを持っていきます。

そして8月31日、学校での送別会を終えて東京に向かいます。

これで八幡平の家は無くなりますが、まだまだ八幡平市にかける思いと夢は継続中です。
それらはこれからのお楽しみ、ということでお待ちください!

内覧会のお知らせ

大寒の厳しい寒さが身にしみる季節となりました。 皆様方におかれましては益々ご活躍のこととお慶び申し上げます。
この度、東京都新宿区荒木町の集合住宅【Court Modelia YOTSUYA ARAKICHO】 が竣工致します。
引渡を前に、内覧会を開催させて頂くこととなりました。
御多用中とは存じますが、お繰り合わせのうえ御参加くださいますよう、お誘い申し上げます。

なお、現場は内部フロアが大変冷えておりますので、靴下と手袋(できればスリッパ)をお持ちになることをお勧めします。

日時 2018年2月3日(土)13:00~17:00
住所 東京都新宿区荒木町16-10
交通 都営新宿線「曙橋」駅 A4出口徒歩2分
   東京メトロ丸ノ内線「四谷三丁目」駅 4番出口徒歩8分
当日連絡先 090-2305-7592(桑原)  090-4076-2798(清水)

四谷荒木町オープンハウス.jpg

Airbnbその後

8月29日のブログでお伝えしたオークフィールド八幡平へのAirbnbによる宿泊体験がこの10月で28組44泊のお客様をお迎えするまでになりました。毎回実に素敵なゲストにいらしていただき、とても豊かな交流が行われています。日本はもちろんのこと、インドネシア、韓国、中国、スイスと国籍も幅広く、みなさん実に日本が好きで、また、中にはこの地域への移住をご検討されている方もいらっしゃいます。本来、私が運用するにあたって借りている費用よりもAirbnbの売り上げが上回らなければいけないのですが、現実はなかなかそうもいきません。が、それでもこうした交流が生まれていくことはオークフィールドにとっても地域にとっても大きなプラスの財産です。いうまでもなくホストである私自身の「生きがい」にもつながっていきます。また、「居住者の生きがい」にもつながることは何よりも捨てがたい魅力です。是非みなさんもいらしてください。きっと、忘れがたい思い出と暖かいつながりを見つけていただけると思います。お待ちしております。

20171010.jpeg

Airbnb(私のお部屋)
https://www.airbnb.jp/wishlists/224104253/join?invite_code=CBBBILPA&inviter_id=103298140

白金台の集合住宅内覧会一日目

20160719.JPG先週土曜日、白金台の集合住宅の内覧会を行なった。
たくさんの友人、知人、仕事仲間、そしてクライアントの方々に足を運んで頂いた。
様々なご意見を頂戴できるのも本当にありがたいことだ。
こうした場は、僕自身の「今」を伝えるまたとない機会なので、最も大切にしていることなのだ。
今週末土曜日午後、二日目の内覧会を行ないますので、まだ足をお運び頂いていない方は是非ご来場ください。
お待ちしております。

日時
2016年7月23日(土) 13:00〜18:00
住所
港区白金台2-19-2
交通
東京メトロ南北線・都営三田線「白金台」駅 1 番出口徒歩7分
都営浅草線「高輪台」 駅 A2出口徒歩5分
JR・東京メトロ等「目黒」 駅 徒歩14分
当日連絡先
090-2305-7592(桑原) 
090-4076-2798(清水)

物件名
芝白金ホームズ
敷地面積 376.28m²
用途 長屋(3戸)、共同住宅(6戸)
構造 RC造
階数 地下1階、地上3階(屋上にペントハウス)
建築面積 254.34m²
延床面積 443.79m²
意匠設計 桑原聡建築研究所
構造設計 我伊野構造設計室
設備設計 YMO
施工 金澤建設株式会社
FFE 唯アソシエイツ

留意事項
車でお越しの場合は、近くの駐車場をご利用下さい。
スリッパ、手袋等ご用意をお願い致します。
お手洗いはお近くのコンビニ等をご利用ください。
引渡し前につき、傷・汚れには細心の注意をお願い致します。

立派な牛をいつか持ちたい!

「立派な牛をいつか持ちたい!」そんな夢を持って暮らしている人々がいる。
南西諸島の奄美群島に属する離島の1つ、面積約250平方キロメートル、周囲約80キロ、人口約27,000人の島、徳之島のシマンチュたちのことだ。

20160714.jpg

昨晩は、アクティブシニアのCCRC構想を前向きに検討している、徳之島伊仙町から来られた大久保明町長さんを交えての勉強会に参加した。
伊仙町は、120歳まで生きた泉重千代さんをはじめ、長寿の町として有名である。どうやら、この島だけに特有の多種多様な地質から生み出される植生環境が、ずば抜けて栄養成分が濃厚な野菜を育み、それらを摂取することによって長寿がもたらされているらしい。現在それを裏付ける研究が進められているそうだ。
今も町の人口6600人に対して100歳以上の高齢者の方々が27人もいらっしゃる。また、合計特殊出生率2.81人は全国一位に輝く。
闘牛に沸き、祭りだけでなく、出産祝い、入学祝い、成人祝い、そして冠婚葬祭もすべて町ぐるみ、集落ぐるみ、という、何をするにも熱い人々なのだ。

このとてつもなく面白い町をお題に、僕たちが知恵を絞ってまちの活性化の具体策を考えてみよう、というのが今回のテーマだ。少しいつもの仕事から離れて、人と人がつながる仕掛けや方法を考えてみる良いチャンスなのだ。
講師は八幡平でお世話になっている、三菱総合研究所の松田智生さんが努めている。

病院プロジェクト

現在、八幡平市で、回復期リハビリテーション病床100床、一般病床50床、計150床の病院建替え、改修プロジェクトに参画している。

回復期リハビリテーション病棟は、脳卒中などの脳血管障害や骨折などの手術後1〜2ヶ月の急性期を脱しても、まだ医学的・社会的・心理的なサポートが必要な患者に対して、多くの専門職種がチームを組んで集中的なリハビリテーションを実施し、心身ともに回復した状態で自宅や社会へ戻ることを目的とする。
その後自宅や社会にもどっても寝たきりにならないよう、起きる、食べる、歩く、トイレへ行く、お風呂に入るなどの「日常生活動作」ADL(activities of daily living)への積極的な働きかけで改善を図り、家庭復帰を支援していくものである。
つまり、そこで展開される医療行為は、実はくらしへのサポートそのものである。

今から二年前、この病院建替え、改修プロジェクトの相談を院長から受けたときに、僕は病院機能については全くの素人だから、どなたか専門の設計事務所をご紹介すれば私の役目は終わりだろうと考えた。
しかし、回復期リハビリテーションについて学ぶうちに僕のテーマも明確になったこと、また、オークフィールド八幡平が成功するためには最寄りの病院であるこの病院の整備が最重要課題であることを考えると、僕の立ち位置が明確になってきた。なんとしてもこの病院建替え、改修プロジェクトを「隅々まで細やかな目が行き渡ったもの」にしなければならない。
また、その後、膝関節を骨折した娘の一月半にわたる入院介助とその後のリハビリテーションのサポートを経験し、また、一方では高齢者住宅を設計するにあたり、介護・介助について詰めて考えていたこともあって、僕の中では、患者の生き甲斐、達成感、やる気、恐怖心、などなど、医療空間、病床空間、リハビリテーション空間に関わる様々なテーマとアイディアが自然に湧き起こってきた。

現在進行中の病院建替え、改修プロジェクトでは、主に患者が過ごす空間のデザイン、動線、設備、照明など、患者の生活環境を整理し再構築する提案を僕が受け持っている。これまでどちらかと言うと効率重視の傾向が強かった病院建築のなかで、実はまだまだ声が小さい部分だったのではなかろうか。
ナイチンゲールが看護の立場から病棟をレイアウトしたことは知られているが、まさにその原点を今ここで患者の目線から考えたいというのが私の思いだ。
フィンランド、ヘルシンキから西へ約150㎞のトゥルク近郊の森の中に佇む結核病棟、パイミオ・サナトリウム(1933年完成)も、建築家アルヴァ・アアルトが、自分自身の入院経験を基に設計したと言われている。

僕も何度か入院経験があるが、何の工夫もない天井に、配管の水漏れか何かのシミがあって、夜中に目が覚めて見つめていると何かの顔かたちに見えてきたり、向かいのベッドのおじさんが元気ならまだ良いけれど、具合が悪くなったときなど目が合っただけで自分もついつい引き込まれてしまいそうな気分になることもある。かといってカーテンを閉めっぱなしというのは僕には閉鎖的すぎて耐えられない。食事はベッドで食べるなんてもってのほかで、少しでも動けるようになったらテーブルと椅子を使って食べたい。本当は一刻も早く病棟を離れて普通のレストランで食べたいけれど。病室にいるときくらい読書がはかどる時間はない。頼むからそのテレビを消してくれ。下着の色みたいなその地味で無難な色使いは僕にとっては気力を削ぐものにしか見えない。それでも、にこやかに接してくれる看護士さんは本当に天使だあ。と、まあ、これはあくまでも個人的な感想である。

20160708-101.jpg20160708-102.jpg20160708-103.jpg今回僕が提案した4床病室は、従来の中心振り分けのベッド配置と、対面するベッド配置を避けた風車型ベッド配置の両方を組み合わせられるように、すべての病室の内法寸法を統一し、同寸とした上でスイッチ、コンセント類も2ウェイどちらでも対応できるように配慮している。
というのも、設計者は扱う規模が大きくなればなる程、柱芯寸法をきりの良い数字に丸めて面積を統一計算する悪い癖がついていて、特に下層階に駐車場が入っていたりするケースでしばしば起きる話なのだが、部屋内に巨大な柱型が出てきてしまったり、パイプシャフトが出てきてしまったりしてもお構いなしに内部をいじめてしまう。その結果、残念としか言いようのない、イレギュラーな設計が起こりうるのだ。最悪な場合、家具の扉が開かなくなってしまったり、開けようとすると通路の寸法が足りなくなってしまったり。特に病棟の設計では車椅子やベッドそのものを移動するので「納まりが悪い」という建築家のマニアックなこだわりを通り越して悲惨な結果も起こりうる。
逆に住宅設計の設計者からすると、かなり細かな内部寸法の調整をして無駄な出っ張りのない、「納まりの良い」、すっきりした空間を練り上げることが当たり前なのである。だから今回は、図面を受け取った施工者はこの通り芯寸法って?と、顔をしかめることになると思う。

今回こうして熟慮を重ねた結果、何度も図面を修正して作られた、風車型ベッド配置のプランでは、よりベッド空間の個別性が出てくるはずだ。さらに、ベッドが室内通路に対して横向きにできることで側方介助と車椅子への移乗がしやすくなるのもメリットの一つだ。

そして各室に取り付けられた手洗いの洗面台が、雄大な山岳風景を取り込む正面の大ピクチャーウィンドウのど真ん中に配置され、患者が毎度必要とする洗面手洗いの行為が「行なわなければならない」「頑張って行ないたくなる」空間として最高の場所に位置づけられている。

また、閉鎖的になりがちな廊下との間に開口を設けることで、廊下側のベッドにも適切なあかりの確保と、窓側ベッドと並ぶ選択のメリットを与えている。

各階の南面に設けた食堂には、一人で黙々と食事を摂ることもできるカウンター席を設け、そこからは、正面に仰ぐ雄大な山岳風景から元気を貰うことが出来る。気の合う仲間ができた患者や、家族が介助する患者は、大テーブルで食べることができる。患者それぞれの性格やニーズによって居場所を選択できるのだ。

今回も階段はいつもの15センチ×30センチ、お決まりの寸法だ。ワンフロア2回の踊り場休みがあり、屋上までの3フロア、実に楽に上ることができる。リハビリテーションに大いに活用して頂きたいスペースのひとつなのだ。

最後に色使いは元気が湧き出てくるような爽やかで奇麗な色をチョイスして行こうとしている。

ここまでお話してきておわかりの通り、自分でも即入居したい病院を作ること、それが今の僕のミッションと考えているのだ。ただし、その前に出来ることならお世話にならずにいつまでも健康でいたいですけれどね。

このプロジェクトは、昨年末、岩手県八幡平市に完成した「オークフィールド八幡平」から西へ約300メートル。今年3月に着工済。来年、2017年末にグランドオープン予定。
僕は佐藤総合計画と設計チームを組ませて頂いている。施工は戸田建設。
今年四月に行なわれた、素晴らしいキリスト教式起工式の様子も地元八幡平市役所の撮影により公開されている。
https://youtu.be/gBzqUTE_lKQ

今年も一年、楽しい仕事が出来ますように

僕の職業は建築家なのだけど、家具も作るし、あるときはインテリアコーディネーター、そしてまたあるときはデコレーター、はたまたたまにキュレーターにもなる。いまのところ住宅に限りの話だけど。
つまり、ひとさまのライフスタイルを丸ごと作る職業なのだと捉えている。

そのため、日頃からライフスタイル関連商品のリサーチを欠かさない。国内、海外問わず、レストランやショップでふと気になるものを見つけると裏返して刻印をチェック、初めて見るものであればすぐにググってブックマーク。日本での取り扱いを調べておく。すると案外知人の取り扱いだったことを知ることもある。
そして本当に気に入ったものは先ず自分で購入して使ってみる。
そうすると本当に永く使えるものなのか、ただ奇麗なだけのデザインなのかがよくわかる。しかし、ものは使いやすければ良いというものでもない。使いやすくするために取ってつけたようなデザインは一番嫌いだ。永く使えるということはデザインも使い勝手もすべて心地よいものなのだ。ただのディスプレイならそこまでしなくても良い訳だけど、僕はどうもそうした思い切りがない。使うものでも飾るものでも購入する以上はその存在理由が欲しいのだ。
だから、ただのディスプレイだとわかっていても、例えば本を購入するときなど見かけのボリューム感、表紙の格好よさ、そしてその中身の有益さをはかりに掛けて悩みに悩む。もちろんコストパフォーマンスも重要だ。たとえクライアントが中身を見ることがないとわかっていても。しかし、そうしていちいち悩んでいるのは無益なようにも見えるかもしれないし、スタッフからするといいかげんにしてくれ!といいたくなるところだと思うが、実はこれこそが僕にとってものすごく重要なリサーチなのだ。できれば一年365日悩んでいたいくらい幸せなリサーチの時間なのだ。

先日お客様のお宅に伺った際にトイレと洗面に設置したペーパータオルホルダーの具合が悪いと相談があった。ゴミがたくさん出るペーパータオル、実は自分では使わず、僕はハンドタオル派である。よって、こればかりは自分が日頃使っているものをお勧めすることが出来ない。それこそデザインはとても奇麗なのだが、よくよく見てみれば原理的に無理のあるデザインで、ペーパータオルホルダーの必要性能が満たされていないデザインのものだった。
卸元とも相談した結果、彼らとしてもこのように分析的なクレームであればと、対応して頂けることになった。この際だから僕もしばらくの間ペーパータオル派になってテストしてみることにしよう。

僕の職業は建築家である。しかし、実際にはそんなことを楽しんでいる。
あ、全然関係ないけれど、今日は七夕だ。
今日は早く帰って子供たちと一緒に願い事をしよう。
今年も一年、楽しい仕事が出来ますように。

20160707.jpg

1 2 3 4 5 6 Next

Page Top