桑原聡建築研究所

Satoshi Kuwahara Architectural Studio

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マテリアル [ 16 entry ]

ローバル「マットカバー」

20140911-3.JPG僕は、ヤマキ工業さんと一緒に「AKS 赤坂のゲストハウス」の仕事をさせていただいたときから、リン酸処理鉄板の味わい深い表情に魅せられていて、その後、建築の金物だけではなく、家具に使ったりもしてきました。
この仕上げの特徴は、放っておけば錆びてしまう鉄板に、溶融亜鉛メッキと、リン酸亜鉛によるダブルの皮膜をつけることによって高耐食性が得られることです。
また、光沢のある銀色の、出来たてはギラギラしてしまう、溶融亜鉛メッキ仕上げとは異なり、艶のない濃灰色の落ち着いた色合いを得ることが出来ます。
もうひとつ、塗膜の表面にスパングルと呼ばれる光を反射して鈍く輝く結晶模様を持つことによって、独特で、一つとして同じ表情がない、唯一無二の表情がえられることです。
耐用年数は、たとえば、海岸地帯であっても30~40年程度の耐久性を確保できるといいます。
また、処理時間を調整することで色の濃度の変化をコントロールしてイメージする色に仕上げることができるのも魅力の一つです。

ただ、とてもデリケートで高価な仕上げのため、特に小ロットの場合、なかなか簡単に使うことはできません。
また、色合いのコントロールとなると工場で作業に立ち会い、オペレーターにつきっきりで指示を出さないといけません。
また、後工程で溶接をしたくなったり、細かい細工をしたくなると、補修ができないというディメリットがありました。

以前から溶融亜鉛メッキの補修ペイントで知られている、ローバル株式会社の担当者さんにこの表情に近いものが作れないものかご相談してきました。
こうしたマニアックな相談はやはり他でもあるようで、新色ができたのです。
1年ちょっと前にご案内いただいたこの新製品。

ローバル株式会社製、低光沢めっき補修用スプレー「マットカバー」です。
以下、パンフレットから抜粋します。
420mlスプレー缶で0.4m2を2回塗りできます。
お値段はひと缶2,150円なり。
明度N3~N4の低光沢処理(りん酸亜鉛処理)された溶融亜鉛めっきの補修に最適なスプレーです。
また、鉄面や亜鉛めっき面に塗装することでめっきの光沢を抑え、黒っぽいマットな意匠性に仕上げることができるジンクリッチペイントです。

さて、今、製作中の家具は店舗用の什器です。
このスプレーを使って渋い色あいの什器に仕上げています。
時間とともに表情が変化することもこの塗料の楽しみの一つなのです。

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山形へ 工場視察その2

昨年竣工したBrillia辰巳マンション
その共用部に設置した総延長約30メートル×奥行き1.5メートルという巨大な総革張りのデイベッド。
この製作を引き受けて頂いたのがAD COREさんなのだ。
車の売上が一気に冷え込んだリーマンショック後の2009年あたりだったか、AD COREが取引している革加工業者さんが車のシート用レザーの需要が落ち込んで困っているという話を聞いた。
ちょうどその後に計画したマンションの共用部で当然本革を使いたいがメンテナンスや耐久性の議論になるとちょっと危ないな、、、と感じていて、そうだ!車のシート用レザーなら耐久性はお墨付きだし高級車用のシートであれば風合いも良い。これだ!と思ってプレゼンテーションしたらディベロッパーの方にはおおいに共感して頂いた。そこで即お願いすることにしたのだ。

そんな経緯もあって今回、この革を作っていただいたミドリホクヨーさんに伺うことが出来ると聞いて即スケジュール調整して視察ツアーに参加させて頂いた。

このミドリホクヨーさん。僕がこれまで取引してきた革工場の規模とは比べ物にならない大きさ。自動ラインも充実していて壮観だった。
車メインの工場なので耐久性とクオリティーコントロールは完璧と感じた。

ただ、僕の本当の好みはクロムなめしではなくタンニンなめしだし、型押しのシボではなく天然シボ、染料にしても吹くより漬けろ、、、、つまり、品質安定の方向とは真逆の方向を向いている訳だけれども、堅いことはいうつもりはない。そこはケースバイケース。現場のニーズに合わせて最適解を探る。そうするとこれが正解でこれが間違い、という議論にはならずに済む。臨機応変に計画をコントロールして使い分けてゆけば良い。

そんな風に引き出しを多く持つことができるのも工場を見るという第一歩から始まる。

今日は他にアルミの鋳造工場を見学。
大変有意義な二日間を過ごさせて頂いた。

ちなみにミドリホクヨー社はあの有名な安全靴メーカー、ミドリ安全のグループ会社です。

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材料探し その2 ゼブラウッド

昨日掘り当てたもう一つの材料がゼブラウッド。
アフリカに分布し、ガボン、ナイジェリア、カメルーン、タンザニアなどの熱帯雨林に生育する、マメ科 Microberlinia 属の広葉樹だ。
シマウマのような縞模様が美しい材料だ。
昭和30~40年代にかけて洋服タンスの化粧板に使われ大流行したそうだが、つい数年前にもそこそこ流行した材料だ。
こちらは柾目の素直な材料を選んだ。
素直な柾目の特徴を生かして4枚はぎ、5枚はぎで粗木取り。
するとちょうど大テーブル中テーブルの分でほぼ綺麗に使い切る計算。
これで材料はすべて決まった。あとは4月完成に向けて待つのみ。

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材料探し その1 黒柿

4月に納品するテーブルの天板用にスペシャルな材料を探しに行った。
スペシャルと言っても単に高価な銘木ではない。
銘木だけれどデッドストックになっている材料を探しに行ったのだ。
材木の山のなかから出てきたのが黒柿。
これは割れも入っていて大板で使うことはできない材料。
だから使われないままここにストックされていたようだ。
さっそく割れと暴れを除けて粗木取り。
今回のテーブルは大中小あり、一番小さいテーブルなら2台分丸々取ることができそう。
こうして黒柿が今日の収穫となった。

ところで、黒柿とは?
柿の木の心材に稀に黒色の縞模様や濃淡が現れる。
この材のことを黒柿(くろがき)と呼び、古来から珍重されている材料なのだ。
なかでも、孔雀の羽の模様に似た「孔雀杢(くじゃくもく)」が現れると、これはもう相当な高値がつくことになる。
まだまだ僕にはそこまでの高価な材料は使いこなせそうにない。

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金属のこと

例えばドアハンドルなど、金属素材のアイテムをセレクトする時、これまではステンレスかアルミといったシルバー材しか見てこなかったのだが、最近ちょっと嗜好が変化した。
かつて毛嫌いしていた重厚なブロンズの硫化いぶしや真鍮といった素材感や手触りの暖かさに魅力を感じるようになってきたからだ。
だから、事務所の若いスタッフ達にはきっと君たちも僕くらいの年齢にならないと分からないと思うけれど、、、と注釈を入れて検討をさせるようにしている。
家具の材料としても存在感のあるこれらの素材を効果的に使いたい。
そんなことで今日は金属の加工専門会社と打ち合わせをした。
打合せをしながら様々な現場の苦労話を伺ううちに実物を見たくなった。
幸い銀座や日本橋、丸の内にそれらの現場は固まっている。
打合せの後、すかさず夕暮れの街に出て金属への思いを新たにした。

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葦簀

20110418.jpg今月完成する住宅で製作するテレビボードの扉の鏡板に葦を使おうと決めて赤坂の簾屋さんに出かけた。
赤坂見附から歩いてすぐの鈴松商店。
自動と手動の年季の入った織機が2台。
扉の納まりなど打ち合わせをして寸法を決定した。
お願いして織機を動かして頂く。
こうして制作風景を見ていると様々なものを織ってみたくなってしまう。

節電を心がけたい今年の夏、きっと簾の需要は増えるだろう。
葦簀と風鈴と打ち水で涼気を感じる、そんな日本の夏が訪れるのだろう。

きっと忙しくなりますよ〜と話すと、そうだといいんですけどね〜と控えめだ。
そんな鈴松商店のファンになった。

石のこと

一昨日のコラムの続きです。

メキシコで見た石の使い方がとても良かった。
そこで見たのは色も柄もバラバラ、下手をすると材種も違う。
しかし、「石」であることに嘘は無い。
地下鉄の歩道であれ、住宅の床であれ、公共建築の床であれ、どこを見ても日本のそれのようにキレイで均一な表情など皆無。
きっと、設計図書には「石」としか書いていないんじゃないの?と思えてくるくらいだ。

でも木の場合と同じくこの表情、僕は大好きだ。
メキシコ滞在中、どれだけ多くの「床」の写真を撮ったことか、、、

だから、一昨日、ヒノキ工芸の戸沢会長に「僕はこれから、ヒノキ工芸に家具を頼む時は、「木」とか「石」としか図面に指定しませんから、、、」と宣言した。
作り手に抜群のセンスあるがあるからいえることばではありますげれど、、、

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木のこと

4月末納品予定の住宅の家具制作、お尻に火がついた。
あと2週間しかない!

しかし、震災を経て、メキシコから帰って来て、これまで描いていた考えを変えたくなった。
それで本来なら昨日打合せで制作に入る約束だったのを一日ずらして頂き、昨日今日と粘って新しいプランを描きなおした。

変更点その1
当然、耐震性を強化した。
変更点その2
今回の家具は無垢材を使用する計画だったが、貴重な資源をありのまま無駄無く使いたいと考えた。

今回も家具製作はヒノキ工芸にお願いする。
今回使う予定の材料をチェックし、材厚をさらに修正する。
また、新たな仕入れをしなくても済む、工場在庫の使いやすい材料に変更する。

20110412.jpegメキシコで見た木製の家具は、どれも力強かった。
「赤身」(あかみ)と呼ばれる心材、「白太」(しらた)と呼ばれる辺材が混ざり合っていてもおかまい無しだ。
赤身と白太が混ざる材は「源平(げんぺい)」と呼ばれて一般にはあまり歓迎されないものなのだ。

しかし、僕はこのような使い方こそ、好きなのだ。

そこにある材料を使ってモノを作る。
そのためには柔軟さと臨機応変さが肝要だ。
これからのモノ作りにはそうしたスタンスが欠かせなくなって行くような気がする。

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