桑原聡建築研究所

Satoshi Kuwahara Architectural Studio

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デザイン [ 48 entry ]

南イタリア4

アルベロベッロ
Alberobello

20140905-1.JPG20140905-2.JPGわあ、キノコだあ!と、ウチの小さな娘に一番受けたのがここの風景。
にょきにょきとライムストーンを小端積みしたイグルーのような家が連なっています。

屋根の突端に取り付いたいくつかの形に分類される家紋のような飾りが、また不思議さをかき立てています。
屋根の勾配がきついために壁厚分の1.5倍位、つまり、1メートルほど軒の位置が通常の建物よりも低くなるため、その外観はこびとの家のようです。
この建築様式はトゥルッロと呼ばれ、この辺りの農家によく見られるかたちですが、集合してこれだけ多く連なっている例はここでしか見られません。
ちなみに、連棟式のものは複数形でトゥルッリと呼び分けられます。

20140905-3.JPG20140905-4.JPG20140905-5.JPG

20140905-6.JPG20140905-7.JPG20140905-8.JPG内部は基本的に円形の壁で囲まれた室がシャボン玉のように連なって一軒の住宅を構成しています。
円形にはいくつかの理由が考えられます。
まず、屋根がイグルーと同じく積み上げやすいこと。
次に、雨水を地下に貯水するために水槽としても水圧分散がはかれて都合が良いこと。
そして、壁であっても屋根であっても細かいパーツで積み上げたときに崩れにくいこと。
また、風化したり割れたりしたパーツ交換も簡単で、古い物を手前に引き出し、新しいものを奥まで差し込んでしまえば楔のように固まること。

この作られ方、子供が砂場で遊ぶ時に自分が中心にいて徐々に周りに拡大して行くようなプリミティブなつくられ方です。
最初に中心を決めて積み始めに半径を決めれば自動的に室のサイズが決定されるところが実にセルフビルドに向いている建築形式だとおもいませんか。

先ほど、このトゥルッロ、近隣の農家の形式と申し上げましたが、Alberobelloでは都市的な集合形態をとっているようにみえますが、ほとんど平屋で裏に農園があるものも多く、これもやはり農村集落の一つと考えられます。

ここ南イタリアでもレストランはオーガニックを目指しているところが多く見られます。
僕たちが毎食お世話になったレストランもキッチンを通り抜けた先のテラス席のテーブルは農園に面しています。
ふと気がつくと下の娘はスタッフのイケメン君と一緒に畑に入り、収穫をしていました。
このあと、キッチンで二人のイケメンスタッフに代わり代わりキスとハグそしてチョコレートの攻撃を受けることになります。

このモテモテぶりは相当楽しかったらしく、「ねえ、おとうさん、畑が欲しい」というのが目下の彼女のはやりです。

南イタリア3

20140904-1.jpg20140904-2.jpg20140904-3.jpg20140904-4.jpg20140904-5.jpg20140904-6.jpgカステル・デル・モンテ
Castel del Monte

こうした軍事的な建築は興味の対象外だったのですが、この八角形の平面、どんな風だか実物を見てみたいと思いませんか?
これは13世紀に神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世(1194年12月26日〜1250年12月13日)によって建築されました。

集落を抜けて荒れ地のような耕作地帯をひたすら行くとこの要塞のために作ったとしか思えないような小高い丘が徐々に近づいてきます。
その上にこの八角形の建物が360度地平線まで見渡して建っていました。
僕は平面がそのまま地平線まで拡大しているようなランドスケープにまずはノックダウンさせられてしまいました。
そして内部、これまた装飾を控えたシンプルさのなかに実に丁寧な仕事が施してあって圧倒されました。
これはこの建築に求められるクオリティが装飾ではなかったために、石工達の表現の手法が「丁寧さ」以外になかったのではないかと思えます。
滑らかでありながらシャープさを忘れていない面取り。
見切りにここまでこだわるか、というくらい目地底まで丁寧にパイプ状の細工が施されています。

実は、後で知ったのですが、この城は軍事上でも居城でもなくって、別荘または客をもてなすために使用された別邸と考えられているのだそうです。
360度開けた土地に居ながら全ては内部に、そして細部に向かう。
めちゃくちゃストイックです。
皇帝の美意識がずば抜けていたということがよくわかりました。

南イタリア2

20140903-2.jpg20140903-3.jpg20140903-5.jpg20140903-6.jpgサンタ・アガタ・デ・ゴーティ
Sant'Agata De'Goti

ナポリから1時間程で辿り着く中世の要塞都市です。
渓谷の中洲のテーブルストーンのような岩盤にニョキニョキとペンシル状の建物が生えたような都市です。
岩盤が基礎になり地下室になり、その上に都市が築かれています。
だから地盤と基礎そして建築の境がここにはありません。
この街には一本橋で渓谷をまたいで入ります。
橋を渡るとそこはもうそれ以上増殖しようの無い位高密に熟成した街です。

車でこの街に入るには少し度胸が必要です。
奥に進むに従い徐々に道が細くなっていくからです。
そんな道の途中ではドアも開きません。
そんな場所では両側の建物のちょうどドアミラーがあたる高さの部分が窪んでいます。
だから左側のドアミラーをその窪みにぴたりと沿わせて行けば必ず通り抜けられるようになっているのです。
しかし、借りた車でこんな場所を走るのは正直言って心臓に悪いです。

小さな街ですから僅かな滞在であっても何度も同じ道、同じ広場を歩きます。
そして何度も同じ人に会います。
その度に僕たちも笑顔で挨拶を返します。
しかもイタリアの人々は子供を見ると黙ってはいられないようです。
小さな子供を連れて旅をするとどこに行っても話しかけられます。

ところで、この日、街にはイタリア国旗と星条旗が交互に掲げられていました。
聞くと我々が滞在した前日にニューヨーク市長、ビル・デブラシオ(Bill de Blasio)が滞在したという。おばあちゃんの故郷がこの街なのだそうだ。

さて、なんだか最初の街で既に僕はお腹いっぱいになってきました。
僕が好きな街の要素がぎゅっと濃縮されているからです。
しかし、まだまだ先があります。
続きはまた。

山形へ 工場視察その2

昨年竣工したBrillia辰巳マンション
その共用部に設置した総延長約30メートル×奥行き1.5メートルという巨大な総革張りのデイベッド。
この製作を引き受けて頂いたのがAD COREさんなのだ。
車の売上が一気に冷え込んだリーマンショック後の2009年あたりだったか、AD COREが取引している革加工業者さんが車のシート用レザーの需要が落ち込んで困っているという話を聞いた。
ちょうどその後に計画したマンションの共用部で当然本革を使いたいがメンテナンスや耐久性の議論になるとちょっと危ないな、、、と感じていて、そうだ!車のシート用レザーなら耐久性はお墨付きだし高級車用のシートであれば風合いも良い。これだ!と思ってプレゼンテーションしたらディベロッパーの方にはおおいに共感して頂いた。そこで即お願いすることにしたのだ。

そんな経緯もあって今回、この革を作っていただいたミドリホクヨーさんに伺うことが出来ると聞いて即スケジュール調整して視察ツアーに参加させて頂いた。

このミドリホクヨーさん。僕がこれまで取引してきた革工場の規模とは比べ物にならない大きさ。自動ラインも充実していて壮観だった。
車メインの工場なので耐久性とクオリティーコントロールは完璧と感じた。

ただ、僕の本当の好みはクロムなめしではなくタンニンなめしだし、型押しのシボではなく天然シボ、染料にしても吹くより漬けろ、、、、つまり、品質安定の方向とは真逆の方向を向いている訳だけれども、堅いことはいうつもりはない。そこはケースバイケース。現場のニーズに合わせて最適解を探る。そうするとこれが正解でこれが間違い、という議論にはならずに済む。臨機応変に計画をコントロールして使い分けてゆけば良い。

そんな風に引き出しを多く持つことができるのも工場を見るという第一歩から始まる。

今日は他にアルミの鋳造工場を見学。
大変有意義な二日間を過ごさせて頂いた。

ちなみにミドリホクヨー社はあの有名な安全靴メーカー、ミドリ安全のグループ会社です。

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山形へ 工場視察その1

広尾に本社とショールームをおくAD CORE。
昨年は家具の製作でお世話になった。
彼らが自社家具の制作を委託しているのが山形の朝日相扶製作所だ。
この朝日相扶製作所をAD COREの案内ではじめて訪れることが出来た。

実はこの工場、AD COREの商品だけを作っている訳ではなくて僕がお世話になったり知っていたりするほとんどのモダン家具メーカーに対するOEMの供給をしているという貴重な会社なのだ。けっして自社ブランドを立ち上げることはしない。
そしてあらゆる難しいリクエストに答えられるよう、CADCAMのマシンを駆使して最新の工作機械を自在に操る専門集団なのだ。

しかしやはり工場を見るとそうは云っても最後は人の手、人の感性に勝るものはないことを知る。
そんな貴重な機会をいただいたことに感謝。

蔵王、朝日連峰、月山と、スキーや登山で訪れたことがある山形だが、久方ぶりの訪問で車窓の風景も楽しんだ。

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ルイスポールセン セミナー

20120627.jpg先週に引き続きルイスポールセンショールームでのセミナーに参加した。
ルイスポールセンはデンマークの照明器具メーカーで、特にポールヘニングセンデザインによる対数曲線を断面構造に持つシェードのランプシリーズが有名だ。
シェードへの間接光を自在にコントロールすることによりグレア(眩しさ)の無い柔らかな明かりを目指している。

セミナーからの帰り道、渋谷駅前に新しく完成したビルを見上げると、窓際の天井を埋め尽くすダウンライトが夜空をバックにギラギラと目に突き刺さった。これはちょっとした光害だな、と改めて思った。

不動の土地、永遠の水

我々はこれまで土地が不動のものであると信じてきた。
しかし土地は動くという事、不確実なものであるという事実。
そこが3.11を経て大きく学んだことだ。

また、もうひとつ気になっている事がある。
それは、水である。
僕たちは水の豊富な日本に住んでいて、いつでもどこでも水栓をひねればふんだんに水が出る。
水は永遠であると思う一方で、現在水源地の民有林に外国人の所有権が多く入り込んでいる事実を知っているだろうか?
土地と同様、水が永遠であると思うことは、あまりにも無防備である。

土地を読み、人間の生命線である水をどの様にデザインするか。
建築を設計する際の前提条件となっている敷地と水。
ここから建築を捉え直してみたいというのが今の気持ちだ。

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研究会、お題は「ジェフリー・バワの建築」

日中は娘の学校の運動会。
夕方から勉強会へ。
理科大初見研究室OBが3ヶ月に一回程度教授宅に集まり、テーマを決めて勉強会を開いている。

20100529.jpg今回はジェフリー・バワ(1919~2003年)を訪ね歩いた初見教授のスリランカ報告会。
バワはスリランカに生まれロンドンで建築を学んだスリランカを代表する建築家である。
その作品はホテルがその大半を占めており、現在のリゾートホテルのボキャブラリーのルーツのほとんどを彼の建築に見ることができる。

かつては地味な存在だった、地元の材料と技術を使ってきわめてローカルな建築を作る建築家は、現在ではグローバルに語られるようになった。

メキシコのルイスバラガンがまさにそうだし、フィンランドのアルヴァ・アアルト、ノルウェーのスヴェレ・フェーン、そしてポルトガルのアルヴァロ・シザもそうした建築家のひとりだろう。

私はそうした建築家に心を動かされる。

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