桑原聡建築研究所

Satoshi Kuwahara Architectural Studio

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オークフィールド八幡平、サービス付き高齢者住宅その3

宣言文 PART-2

○ 2階建ての住居棟と2階建てのレストラン棟をそれぞれ別棟として計画しました。レストランへ行くことが日常の大事なおでかけとなるように配慮されています。(ただし、渡り廊下でつなぐことにより建築基準法上は不可分の一棟です)
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○ 住居棟内に2カ所ある階段は踏み面303蹴上げ約155と基準値を遥かに下回る緩やかなものとなっており、日常の運動を安全にサポートします。
○ 住居棟中廊下には3カ所のスロープがあります。建物を敷地の高低差に馴染ませるために敢えて採用しました。バリアフリーの計画手法からすると逆行するようですが、建物を一歩出れば起伏があるのは当然。日常の運動の中に階段やスロープを敢えて取り込むことは決して非常識なことではありません。
○ 住居棟には小型エレベーターが一基備えられています。しかし、これは自力で歩行するのが困難になられた方に限り使用していただくことができるものとして計画されています。
○ 共用部は全て土足エリアです。住戸の玄関を出たらそこから「お出かけ」が始まります。
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オークフィールド八幡平、サービス付き高齢者住宅その2

20151208-1.jpg20151208-2.JPG20151208-4.JPG設計図書は単なる図面ではありません。
特に今回のプロジェクトのようにコストが厳しくなると、背に腹は変えられず、ともするとコンセプトを忘れ、ただただ減額に向かって突き進んでしまうことがあります。
そこで、今回の設計図書のトップページには宣言文を記載しました。
それをお見せします。
果たして宣言の通りにモノは出来上がっているでしょうか?

PART-1

○ 本計画は老人施設ではなく人生経験の豊富な方々が集まって暮らす共同住宅(サービス付高齢者住宅)です。過度に機械装備品に頼ることなく自立をサポートしながら楽しく暮らすことができるシニア住宅とします。
○ 敷地は南に岩手山、北に八幡平、東に姫神山を望む自然景観に大変恵まれた立地であり、この貴重な資産を最大限生かした居住環境を創出します。
○ 敷地の緩やかな高低差を生かした計画とします。また、敷地から建設残土は一切搬出いたしません。
○ 街道沿いの歴史ある宿場町のような美しく連続した屋根並みを特徴とする景観を創出いたします。
○ 特に夕暮れのシーンをデザインします。レストラン、住居、トップライトのそれぞれの窓に美しいあかりが灯る時、これを目にした誰もが立ち止まり、生きることの幸福感に満たされる、そんな様子を作り出すことを最大のデザインテーマと捉えています。

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オークフィールド八幡平、サービス付き高齢者住宅

20151207-1.JPG20151207-0.JPG20151207-2.JPG20151207-3.JPG20151207-4.JPG岩手県の八幡平で設計を手がけてきた高齢者住宅第一期32戸が無事竣工し、12月1日に竣工式典が行なわれた。

ここに、CCRCという言葉がある。
Continuing Care Retirement Community の略で、健康時から介護時まで継続的ケアを提供するアメリカにおける高齢者施設のコンセプトである。

今年2月に政府、「内閣官房まち・ひと・しごと創生本部」において「日本版CCRC構想有識者会議」が設置され、ここがまとめた、日本版CCRC構想では、
「東京圏をはじめとする高齢者が、自らの希望に応じて地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療・介護が必要な時には継続的なケアを受けることができるような地域づくり」
を目指すものである、と定義されている。

この構想の目指すところとしては、
1、高齢者の希望の実現
2、地方へのひとの流れの推進
3、東京圏の高齢化問題への対応
の、3つがあげられている。
さらに、アメリカのCCRCは塀に囲われたゲーティッド・コミュニティを示しているが、日本版CCRCでは、「地域に開かれた街まるごと」を目指す、とされている。
まさに、地方創生のエンジンとして「日本版CCRC」の可能性を捉えることができるわけだ。

岩手県岩手郡旧松尾村柏台地区。
2005年(平成17年)9月1日に、同じ岩手郡の西根町・安代町と合併して八幡平市となり廃止された地域だ。
標高2,038mの岩手山の北側山麓に広がる標高約500メートルの高原地帯である。ここから見上げる岩手山は堂々たる稜線を描き、アルプスの景観に匹敵する美しい景観を形成している。
しかし、一方で八幡平市は合併して高齢化率が薄まったとはいえ、5年前に行われた調査では55歳以上の人口比が48.99%となり、準限界集落、つまり限界集落の予備軍と定義される50%に限りなく近づきつつある地域である。

ここが、今回私が取り組んでいる高齢者共同住宅の敷地のあるエリアであり、地区単位で言えば八幡平市全体よりもさらに事態は深刻であろうと思われる。
しかし、ここには前記した見事な景観に加え、良質な温泉、そして医療・福祉施設の他、教育施設も用意されている。
我々都会人で自然回帰志向を持つものにとっては、移住に関しての恰好の環境がすでに整っているのだ。
また、地域住民に対しては避寒利用、首都圏住民に対しては避暑利用と二毛作利用も期待できる。

今回、私たちのプロジェクトの竣工は、東北初のCCRCとして位置づけられ、大きな注目を集めることとなり、12月2日付け岩手日報の一面トップを飾るなど、好スタートを切った。
竣工式典では八幡平市長、岩手県議会議員、別件のクライアントでもある東八幡平病院理事長ほか大勢の参加と賛同を得た。

2010年からプラチナ社会研究会でCCRCに関連するセミナー、分科会、視察などを通じて約6年に渡りCCRCの啓発と普及に努めてきた、三菱総合研究所プラチナ社会研究センターの主席研究員である松田智生さんの応援も頂きながら、今後の動きを見守っていくことになるが、こうした半ば公共的な仕事は、普段特定のクライアントのための仕事ばかりしてきた私としては初めてである。

しかし、これも最初からCCRCに乗って進めてきたという訳ではなく、今回もいつもと同じように、サービス付き高齢者住宅として32人の入居者のために、気持ちよく快適で美しい住宅をつくることだけを考えてきた訳で、特別なことをした覚えはなく、とにかく「施設」にはしたくない、と、ただそれだけのことなのだが、結果、CCRCの目指すところと合致し、後付けながらも日本版CCRCとしてご評価頂くこととなった。
その手応えを大きく感じることとなったのは、感無量である。
竣工式典では、ともに戦ってきたクライアントともその気持ちを分かち合った。

このプロジェクトは今後、第二期、第三期と進め、最終的には中庭を囲う1ヘクタール約100世帯の集落が完成する予定だ。
また、近隣では現在、東八幡平病院の増改築の計画も進んでおり、この地域の沿道景観を作り出しつつある。
さらに柏台近隣地域に発展させ、若手の雇用と移住を連鎖させることで高齢化を緩やかに食い止めるサスティナブルな地域づくり構想を夢見ている。

さてこの住宅、寒冷地の宿命なのだが、グリーンシーズンに工事を行う関係上、どうしても竣工と同時に一年中で最も過酷な冬がやってくる。
この冬を乗り切り、また多くのフィードバックを得ることでさらにブラッシュアップしていくこととなろう。
この地域での仕事は、いまから二年半前のたまたまの偶然の出会いから関わることになったのだが、いまやライフワークになると確信している。

詳しくはオークフィールド八幡平まで。

高尾にて

20151119-1.jpg八王子の目白台という駅からさらにバスで10分程のところで鉄筋コンクリート造の住宅の改修を行なっている。
約5ヶ月の工期で躯体だけを残して後は完全にやり替えると言う大掛かりな工事である。
週に一度は現場にいくのであるが、同じ東京とはいえ、なかなかに遠隔地である。
朝行ったら帰りはもう日が傾いているということが良くある。
ちょっと前に高尾山に娘を連れていって来たが、その高尾山は目と鼻の先。
ならば、せっかく現場にいくなら朝早くに行って帰りに紅葉盛りの自然を少しだけ見ながら食事でもして帰ろうと、いくつかお店をピックアップして順次訪れてみることにした。

今日は自然の中という訳ではないが、一駅先の高尾にある、うなぎと釜飯のうまい店へ。
つい最近デイライトキッチンのオーナーに教えてもらったお店だ。
この辺り、平日のランチ時、どこもそうなのだがとにかく高齢者が多い。
僕が入店した時は、おばあさんと娘二人の3人連れ、脚の不自由な高齢女性一人、車椅子で来店した男女2人連れ、の計3組が料理の運ばれてくるのを待っていた。
僕はホタテの釜飯を注文。
20151119-2.jpg炊上るまでの20分、本を読みながら待っていると、周りの会話がいやでも聞こえてくる。
3人連れはおそらく最近おじいさんが施設に入ったのであろう。
しきりにおじいさんのボケの話をしている。
銀行にでも勤めていたのだろうか、昔は数字に強かったおじいさんがすっかり数字に弱くなって間違った主張をするので困っていると言う。
そうしたおじいさんに対して、頭にきたり、叱ったりする様子がリアルに話題にあがっていた。
お一人さんのおばあさんは40年前に息子さんを亡くし、息子さんと度々来店したこの店に今も時々来ていると語る。そして、家族から車を運転することを禁じられ、電車を乗り継いでくるのだが、いつまでここに来ることができるのかと嘆いている。
そして最後のお2人さん。
おばあさんは車椅子。
もう一人はお孫さんと見えた。
アイドル青年のようにやや長めの髪にウェーブをつくっているが、少しふっくらしており昔イケメン風である。
でも、かいがいしくおばあさんのお世話をしてここまできているとはと、感心して見ていた。
ところが最後の会計のときにわかったのだが、彼は介護スタッフなのである。
おばあさんが介護スタッフを伴って食事にきていた訳だ。
約5000円のランチ代はおばあさんのお財布から支払われ、楽しそうにお店を出て行った。
ギブアンドテイクの関係という訳だろう。

映画のワンシーンのように、静かに人生について語りかけてくる、穏やかな平日のランチだった。

Works更新のお知らせ(軽井沢の別荘U邸)

今年1月に竣工した軽井沢の別荘(U邸)のWorksをアップいたしました。
ぜひご覧ください。

「アマン東京」

「アマン東京」は「アマン」ブランドの27軒目のホテルである。
また、今回、アマンとしては都市型ホテルへの初参入となる。
それでもドレスコードはスマートカジュアル。
短パンTシャツでもかっこ良ければそれで良し。
大都会のど真ん中にあって非日常感、リゾート感満載のホテルというわけだ。

設計はお約束通り、オーストラリア人建築家、ケリー・ヒルが手がけている。
このホテル、2014年に開業した高層複合ビル「大手町タワー」の33階から38階部分に位置する。
足元に広がる「大手町の森」と呼ばれる緑豊かな環境が売りのビルだ。
33階のエントランスホールへは足元の「大手町の森」に包まれた「ザ・カフェ by アマン」の脇から入ったレセプションカウンターを経由して専用エレベーターで上がる。
するとそこには上部4層にわたって和紙に覆われた壮大なスケールの6層吹き抜けの空間が現れる。
これがレセプションホールであり、待合せ・チェックイン・会計・休息・語らい、のすべてがここで行なわれる。
その広大さには誰もが驚くだろう。
さらに琴の生演奏が行なわれ、和のイメージを引き立てている。

僕はかつて、インドネシア バリ島と、タイ プーケット島のアマンリゾーツを訪れたことがある。
施設はちらかと言うとシンプルで合理的、そして簡素な作りで統制されていた。
しかし、その一方で大型ホテルにはない人的サービスについては徹底していて、必要と思うとどこからともなく瞬時に日焼けした笑顔で現れる、白い短パンポロシェツ姿のスタッフたちが清潔感満載でとても気持ちのよいホテルだった。
そんなスタッフに近所の穴場を聞くと、瞬時に四輪駆動の車が用意され、冷たいおしぼりや飲み物と簡単なつまみを積んでちょっとしたピクニックへ連れて行ってくれたりもした。
コテージのピクチャーウィンドーから見える棚田で働く農夫たちの姿もそこになくてはならない伝統的風景の一つとして計画されていると聞いたことがある。
そんなアマンリゾーツだから開業当初から日本の「リョカン」を意識していたことは言うまでもない。
だから、日本上陸は「アマンリゾーツ」にとっては大きな挑戦だったと言えよう。

全84室の客室数は顔の見えるサービスを提供する規模としては上限規模かもしれない。
71m2の広さを誇るスタンダードルームや、ゆったり肩までお湯に浸かれる日本式の「お風呂」など、彼らの提案が旅館とは異なる切り口でどのように受け入れられるかなど、これからが楽しみなホテルだ。

20150920-2.jpgところで、今日、僕はここのレストランで食事をしてきた。
9メートルの天井高のレストランスペースは僕も度々使用する灰褐色の溶岩石に覆われ、客席間のスペースも非常にゆったりとられており、食事だけでも充分リゾート感が味わえる。
また、食後のひとときを和紙に覆われた吹き抜けのレセプション空間で過ごすも良し、ライブラリーでゆったり本の頁をめくりながら過ごすのも良いだろう。
アマンリゾーツが限られた人数のゲストのために豊かな過ごし方ができる場を提案していることがよくわかる。

ところで、すでに日本第二弾となるアマンが三重県志摩市合歓の郷(ねむのさと)にオープンする。
昨年10月に既に基礎工事に着手しており、来年の開業を目指しているという。
こちらも楽しみだ。

出張の楽しみ

月に二度の岩手出張。
朝6時過ぎに家を出て夜9時に帰宅する。
なかなかハードな日帰り出張だが、現場が着々と出来上がっていく様子を見る楽しみに加えてもうひとつ楽しみにしていることがある。

20150919.jpgそれは地元ならではの食材と出会うことだ。
現場の近くの売店に立ち寄ることもあれば、時間がないときは盛岡駅の新幹線改札口の前に出る売店で適当に手に入れる。
これらの売店は行く時々で売り物が全く違う。
いつも同じものを売っているスーパーに慣れてしまっている僕たちにとってはとても新鮮で季節感満載なのだ。

二週間前はトウモロコシを買った。
ほかにはぶどうがたくさん並んでいたけれど、それ以外目立った売り物はなかった。

しかし、昨日は様子が全く違って、あふれるほどのキノコが山盛りに並んでいた。
もちろん岩手県産の天然物ばかり。
松茸、香たけ、ぼりたけ、本しめじ、ほおきたけ、それに、きのこじゃないけど、みずのこぶ。
今年は茸の収穫が早いらしい。

値段が手頃で、かつ、東京では手に入れられない珍しいものばかりを選び、レジ袋一杯買い込んで新幹線に飛び乗った。

キッチン機器の不思議

今日も先日工事が始まったばかりの別件でクライアントと共にショールームをいくつか見てまわった。
その中で、普段何気なく選んでいたキッチン機器の確認をしたのだが、実はとてもおかしなことに気がついた。

あるメーカーの最上位機種。予算取りもあるのでふだんからあまり気にせず選んでいた機種だった。表面のデザインも好感の持てるものだった。
試しにスイッチ類の操作を体験してみることに、、、

まず、スイッチを軽く押し込む動作をすると、いやあ、これはスムーズ!簡単に点火した。
しかし、ショールームスタッフの説明によると、これは誤動作を防ぐために、調理器具がごとくに乗っていないと点火しない設定になっております。。
はぁ?え、じゃあ煽りはできないの?
その場合はセーフティ機能を解除してお使い頂けます。。
えぇ?いちいち解除しなければならないの?
確かに子供が指先でちょこっとボタンを押したら簡単に点火するだろうな。

20150916.JPGそれに比べたら僕が使っている30年もののコンロはとってもよくできている。
押しながら、ひねって、
チッ・チッ・チッ・チッ、チ、チ、チ、ボン!
何と言ったって、なかなか火がつかないんだもの。

さて、気を取り直して今度は魚焼きグリル。
このグリルは魚を焼いた煙をもう一度燃焼させて焼き切って排気するので嫌な匂いが出にくくなっております。
あぁ、それはとってもいいね!今回はオープンなキッチンだからね。
さて、試しに点火。
♪では、魚を焼きます。♪
えっ、いまコンロが喋った?そんな馬鹿な?
もう一度スイッチを押すと、今度は、
♪チキングリルを作ります。♪
えっ?また喋った。勝手に決めるなよ、うるさいよ!
しゃべらなくするモードもあります。と、横から説明が。。

極め付けはコンロにスマホをかざすとバーコードを読み取ってレシピが現れます。その通りに従っていただければどなたでも簡単にお料理をお作り頂けます。。。

うーん。
絶句。

あのぉ、ゴトクだけの一番シンプルで形の綺麗なものありますか?
当ショールームではそうしたものは展示しておりません。。。

そ、そうですか、では、ご案内頂きありがとうございました。
ショールームを出るとき、振り返ると、呆れ顔のショールームスタッフが僕たちを見送っていた。

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