桑原聡建築研究所

Satoshi Kuwahara Architectural Studio

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代官山プロジェクト

代官山で一案件、仕事をしている。
オーナー住居と店舗および事務所の複合ビルだ。
場所も良いし、規模も4階建てと程よいスケールだ。
ただし、残念なことに基本計画と基本設計の半ばまでは僕が行うけれども、基本設計の後半戦と実施設計は設計施工の事業者が行なう。
まあ、ここまでは時々ある話だけれども、今回は基本設計を出したらその後、僕は設計施工の事業者と直接話をすることは禁じられている。
僕が直接意見をすることでプロジェクトの進行上ややこしくなることを少しでもさけたいという思惑があるからだろう。
なので、今後、竣工までの約2年間、僕はクライアントから相談を受けたらその答えをクライアントが事業者にわかりやすく論理的に説明できるようにしむけてさしあげなくてはいけない。
つまり、クライアントが建築のプロとはいわなくてもセミプロ級のクライアントになるように実際の現場の動きよりも一歩先に導いて差し上げることが求められている訳だ。
だから報酬もまとまった設計料という形ではなくコンサル料という科目で毎月頂くことになる。

という訳で今日はクライアントご夫婦を一日かけて部材のショールームにお連れして、現在基本設計に含めてある様々な建材の知識をインプットしていただくことにした。
クライアントが自分なりのぶれないイメージを素材や部材に対して持ってもらうことが必要だからだ。
学生に教えているときもそうだったけれど、僕は僕でこうしてショールームを観て歩くことがまた新しい発見につながるので、そうした役割をも楽しませてもらってもいる。
さらにもう一つ重要なのは、一緒に回る道すがら、コミュニケーションしながら、クライアントの空間認識やライフスタイル、こだわりといった内部にあってなかなか外からは伺い知れない身体感覚を理解することである。

20150911.jpgところで今日は、ご案内した水回りの専門ショールームでスペックしていたバスタブに入っていただいた瞬間、クライアントさんがふと浮かべた表情を読み取り、急遽、次の行き先を変更して、大型浴槽の専門メーカーのショールームへと向かうことにした。
よく話を伺うと一日2時間以上は入浴をするという水回りのヘビーユーザー。
だから、水回りに求める期待感は想像を超えて大きい。
今のような初期の段階で気がつかないと後では取り返しのつかないことになる。
きっと楽しい水回りが出来上がるでしょう。

熱海 日向邸

熱海駅から目と鼻の先にドイツ人建築家、ブルーノ・タウト(1880−1938)がインテリアの設計を行った日向邸がある。
日本に現存する唯一のブルーノ・タウト作品である。
学生の頃、スライドで見たことがあり、階段の踊り場のような不思議な非日常空間と、そこから太平洋へと一気に繋がるランドスケープが印象に残っていて、いつか観にいきたいなと思いながら時間の経過とともに忘れかけていた。
時は流れ、オーナーが変わり、最終的に熱海市の所有となって、2005年から一般公開されている。

20150914.JPG日向邸は、アジア貿易の実業家、日向利兵衛の別荘の離れとして1936年に竣工した。
木造2階建ての母屋の設計は、旧服部時計店(現在の銀座和光)などで知られる建築家、渡辺仁(1887−1973)。
太平洋を見下ろす崖上の母屋の庭園自体が土留め擁壁を兼ねた鉄筋コンクリート造の人口地盤として造られており、その基礎部分にある細長い空間をタウトは施主の注文一切なしで自由に設計を行った。
制約としてあるのは敷地目一杯に築造されたために屏風状に折れ曲がった基礎躯体の形態と、崖に沿って階段状に配置された基礎底版である。
タウトはこれらをかなり純粋な手掛かりとして大胆なプランニングを施している。
渡辺仁による木造二階建て第一期、清水組(清水建設)によるコンクリート製人工地盤の第二期、タウトによる第三期と工事は分かれていたようだが、ほぼ同時期に連続して工事が行なわれている様子からすると、渡辺仁としては内心穏やかではなかったのではないだろうか。

さて、タウトの地下空間に降りる。
母屋の玄関から続く明るい降り口から階段を降りてくると中間で頭上に迫る下がり壁があり、ここで誰もがお辞儀をするような格好になる。
そこで頭を上げて視線を正面に戻すと火灯窓(かとうまど)を透かして初島と太平洋の水平線が一気に目に飛び込む。
ここから左に回り込み、僅か4段の廻り階段で視線の方向を時計回りに右に変えると、今度は先で僅かに左に折れ曲がる奥行きのある線状の空間が現れる。
そのインテリアはアジア貿易商人の住宅らしく、建材の調達も自由に扱えたと見え、チーク、オークなどの輸入材あり、竹、桐などの和材あり、和洋が入り混じった数寄の空間と言って良い。

圧巻はダンスや玉突きを行ったとされる社交室と、奥の座敷に挟まれながら、敷地の変形そのままに僅かに角度が振られた階段のある洋室だ。
ここにはワインレッド色のシルクが貼られた広さ12畳ほどのスペースと、フロアから階段5段、高さにして900ほど持ち上げられた、天井高1900程度の小空間が高低差を持って連続してある。
この小空間は、さながらオペラハウスのボックス席のような空間である。
オペラハウスのボックス席といえば、船のキャビンから舞台となる大海原を見るようなシーンとして作られているが、ここではまさにそうしたシチュエーションが重ね合わされている気がする。
そのように考えるとどことなくイカ釣り船や屋形船を連想させる手前の社交室からも海に繋がる要素が見えてくる。

踊り場というのは、芸妓さんが踊る様子を上階から見下ろすことからつけられたとの説を聞いたことがある。
温泉保養地である熱海という場所柄、ここはまさにそうした遊び心を持った踊り場なのだと思った。
全面開口の折戸を開け放つとこの舞台はそのまま太平洋に繋がる。
なんと贅沢な別邸遊びだろう。
実際には休憩室として使われていたとのことだが、自由に設計を任された建築家の想像力はもっと遊び心に満ちていたはずだ。
ただ、いまは、残念ながらこの上段に上がり舞台を見下ろすことは許されていない。
だから、これはあくまでも僕の推測だ。

また、この壇上で談笑するタウト夫妻らの写真が、 残されている。
婦人たちがハイヒールを履き、男性らが靴を履いて談笑している様子に皆違和感を感じて驚いていた。
洋館の基本である内開き扉が取り付けられている母屋の玄関土間からまっすぐに階段を下りることで繋がるこの地下空間は、日向一族がその後どのように使ったかは別にして、下足領域として考える方が自然である。

最後に、この日向邸を再解釈したとされる、建築家隈研吾の作品「水/ガラス」(1995)は隣の敷地にある。
やはりこれも所有者が変わり、現在、ATAMI 海峯楼として宿泊が可能だ。
だから、ここには二つの舞台が並んで建っていることになる。

日向邸見学には事前予約が必要。

八王子の住宅リノベーション

20150910.jpg八王子で一件、着工した現場がある。
築50年になろうかと思われる鉄筋コンクリート住宅のリノベーションだ。
詳細図面は残っているものの日付が不明で突き合わせても現況と異なるものがあり、設計時点では詳細寸法を入れられない中で進んでいった。
こうした話はリノベーションの現場ではよくある話だ。
また、いざ着工して解体してみると予期せぬものが露になり思わぬ補修費用の出費に苦しむことがある。
今回の計画では残すものはコンクリートの躯体のみ。
後は全て更新するので結果的には新築とほぼかわらない費用がかかる。
実際、木造二階建ての住宅を何案か設計してコスト比較したが、逆に安くなる可能性もあった。
ただ、今回の案件では先代の遺したこの住宅を丁寧に継承することが先代への最大の敬意を表すことであるとも言える。
したがってリノベーションの理由としては揺るぎないのだ。

さっそく構造家と一緒に現場を見て回り補修の必要な箇所をピックアップしチェックしていく。
完全に補修をしようとするとかなりの箇所をいじらなければいけない。
50年前の建築現場はよく言えばある意味とてもおおらか。
今ではとても考えられないような納まりが普通に行なわれていたのである。

A ここはさすがにダメでしょう。
B できれば補修したいかな。
C 考え方によっては許容範囲かな。
D 問題ないでしょう。

指摘箇所すべてをA〜Dに分類して補修コストを算出してもらい現場に指示をだすことに。
この住宅は来年1月完成予定。

映画二題

映画を二本観た。

アルゼンチン映画「人生スイッチ」
6つのショートストーリーが全て、想像ではあり得るけど絶対にあってはならない展開の連鎖。これをブラックユーモアというにはあまりにも肉食系なそのやり取りに平和な草食系日本人にはとても理解できない溝を感じた。
着眼点に興味を持って観に行ったけど、今回は完全に空振り。まあ、たまにはそういうこともあるさ。

20150906.jpg

そして、気を取り直して「あん」
僕の中では珍しく今回は邦画だ。
今年、河瀬直美監督がドリアン助川の同名の小説をもとに映画化した。

映画の舞台は、僕が育った西武線沿線。
それぞれが社会的弱者として生きる三人が交錯するのは、東京郊外のよくある風景。
しかも都市的に俯瞰してみると、どこか疎外感を感じる風景だ。
そこは、地方へと繋がるシェルターで覆われた高速道路と、都会へと繋がる私鉄電車が行き交う場所である。
武蔵野の森の中にひっそり佇むハンセン病療養所という、隔離されたコミュニティもそうだし、マンモス団地の風景もまた、どことなくそんな隔離されたコミュニティに重ねあわせて見えてくる。
しかし、そんなコミュニティが、意外に居心地の良さを醸し出していたりするところが、この映画に描かれた平凡な郊外の風景に活き活きとした力を与えはじめる。
むしろコミュニケーションが、いっさいない一人暮らしのアパートや、マンションこそが、隔離そのもの、のように見えてくるのだ。

満開の桜、そして時間と手間をかけて丹念につくられた餡をくるんだ一つ120円のどら焼き、そして餡をこしらえるためのハンドメイドの道具たち。
日本の美しさがこのような典型的な郊外の街にあってもなお、瑞々しく描かれていくことに引き込まれた。

八幡平

image.jpg今日も岩手県の八幡平の現場へ。朝、二学期に初登校する小学校一年生を一人残して家を出たのは6時。
こうすれば現場には10時半に着く。午後から病院設計チームと合流するので現場の打ち合わせはさくさくと。
さて、自宅に帰着するのは15時間後の21時。合宿から戻ってくる高校一年生と新学期の小学生の報告を聞くとしよう。久しぶりのティータイムのために盛岡のスイーツを仕入れました。

セバスチャン・サルガド「The Salt of the Earth」

20150828.jpgビム・ベンダース監督がブラジル出身の写真家セバスチャン・サルガドを撮った「The Salt of the Earth」(原題 Le sel de la terre)を観た。
邦題は「セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター」
邦題からすると何か「ガイア・シンフォニー」のような映画かと思われてしまいそうだが、それは全く違う。

この映画、現在、渋谷東急文化村、ル・シネマにて上映中。
さすがにビム・ベンダースのドキュメンタリー映画はドキュメンタリーを超えた物語になる。
「リスボン・ストーリー」「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」「Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」と、彼が手がけたドキュメンタリーの数は多い。

セバスチャン・サルガドの人生は、
第一章 バベルの塔を逆さにして地獄へと掘り進むかのごとき金鉱の採掘現場にあって、それでもなお夢を追う群衆に人の生の証を見る。
第二章 紛争地域という地球上で最も過酷な生き地獄に身を投じるが、それでもなおそこにある母と子の絆に救いを見る。
第三章 現代文明から遠く離れ伝承をまもり、いまなお生き残る少数民族、あるいは地球の果てで生きる動物の群れに人類と地球のユートピアを見る。
この三楽章で綴られていく。

永遠の時間を感じるモノクロームの超現実的な静止画像が映し出され、そこにその激しい現実に立ち会ったカメラマン本人の静かな言葉が重なる。
すると静止画像はスローモーション映像のように少しずつ動き始めたような錯覚にとらわれる。
途端に観客である僕たちは物凄い臨場感に包まれるのだ。
そして最終章では大きく安らぎに満ちた空気を吸うことになる。
すごいドキュメンタリー映画だなと思った。

そのとき、ビム・べンダースのドキュメンタリー映画は取材の足跡が1本の線を紡ぎながらもうひとつの物語を作り出すロードムービーなのだと理解した。

ちなみに原題となっている「Le sel de la terre(地の塩)」だが、マタイによる福音書5章13節からの引用で「あなたがたは、地の塩である。もし塩のききめがなくなったら、何によってその味が取りもどされようか。もはや、なんの役にも立たず、ただ外に捨てられて、人々にふみつけられるだけである。」とある。
つまり、汚れを清め、腐敗を免れる塩の役目を担う人々がそこにあってこそ、この世の中が救われる。と解釈して良いだろうか。

テーブル製作

オーガニック料理の母と呼ばれるアリス・ウォータース。
そして、彼女がアメリカのバークレーに開店した、世界初のオーガニックレストラン「シェ パニース」
そのアリスと「シェ パニース」をリスペクトし、渋谷、福岡、ほかで、「デイライト キッチン」という名のオーガニックカフェを経営する、塚本さん野崎さん夫妻から頼まれていた、テーブルとベンチを今日納品しました。

このお店は事務所から近いこともあって、客として通ううちにデッキスペースにちいさな小屋を建てたり、アウトドアのテーブルを作る相談を受けるようになって、いまは自分がここで過ごすのに最も心地良いと思えるものを作らせて貰っています。

今度のリクエストはソファ席とあまり変わらない低めの目線で子供も大人も一緒に食卓を囲めること。最大14名が一度に食事がてきること。この2点を実現する大テーブルとベンチになります。

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40年前から一貫して安心・安全でサステナブルな食を提唱してきたアリスの、シンプルかつ豊かに暮らす考え方によりそったライフスタイルを僕たちなりに考えて形にして、このお店から「新しい時代の豊かさ」を発信していくことに私も小さいながら貢献しています。
渋谷にお越しの際は是非ここで素敵な時間をお過ごしください。
お待ちしております。

なお、お子様連れ大歓迎です。

デイライトキッチン
営業時間 11:00-16:00(L.O.15:00) 17:30-23:00(L.O.22:00)
土・日・祝日は 11:00-23:00(L.O.22:00)
東京都渋谷区桜丘町23-18ビジョナリーアーツ1F
03-5728-4528

さて、仕事は全て完了。
今から夏休みに入ります。

八幡平の高齢者住宅

昨日上棟式を行った八幡平の高齢者集合住宅の現場から空撮による雄大な映像が届きました。
設計段階にNext Pictureの冨田和弘さんにお願いして作成したパースと比べると面白いですね。
これは第一期32戸。
今後、手前の広場を囲うように第二期、第三期の計画があります。
一戸あたり約25平方メートルとややコンパクトですが、この自然景観を独り占めする住宅はやはり贅沢です。
60歳以上の方であれば入居可能です。
気になる賃料はフレンチのシェフにより併設のレストランで毎日三食提供される食事込みで月額約16万円の予定です。
1泊3食付き約5300円ってかなりのお値打ちものだと思いませんか?

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